本を読めないエリート大学生の悩みに失望する教授たち 若者たちに欠けている重要な「力」
抜粋で充分?
ボストンとニューヨークの学校で20年にわたり教師および校長を務めてきたマイク・スコルカは、生徒たちのレベルにかかわらず、本の抜粋が本そのものに取って代わったと語る。 「彼らのレベルを測るすべはありません。座ってトルストイを読めるかどうか、それに尽きます」とスコルカは言う。学生たちの読書スキルを測ることができない以上、教師や教育委員会も彼らを教えることに苦戦している。 文学研究者のキャロル・イアーゴは、アメリカ各地をまわって教師たちにカリキュラム作成の助言をしてきた。そこで出会った教師たちはイアーゴに、『マイ・アントニーア』や『大いなる遺産』のような長きにわたり敬愛されてきた名作文学を教えることをやめたと語ったそうだ。パンデミックにより対面授業からオンライン授業に移行したことも、文学離れを加速させることとなった。 3年生から8年生(中学2年生)を担当する約300人の教師を対象にしたエドウィーク・リサーチ・センターの最近の調査によると、本をまるまる一冊使って授業をおこなう教師はわずか17%だった。49%が、アンソロジーおよび抜粋を組み合わせて授業をおこなっていることもわかった。 また、4分の1近くの教師が「読書はもはや授業の中心ではない」と回答した。イリノイ州のある高校教師は、かつては読書中心の授業をしていたが、いまでは優れた判断を下す能力など、さまざまなスキルアップのための授業をしていると語った。彼女のクラスでは、リーダーシップを学ぶ際、学生たちはホメロスの『オデュッセイア』の抜粋を読み、音楽や記事、TEDトークなどでその思考を補完しているという。(とはいえ、一学期に少なくとも2冊の本を読むよう学生たちに指示していると彼女は強調した) アトランタのアドバンスト・プレイスメント(高大接続プログラムの一つ)で英文学を教える教師は、かつて1年で14冊の本を読む授業を担当していたが、いまでは6冊または7冊に減ったと回答した。 圧倒的なエリート大学への合格者数を誇る私立学校では、ほかの学校に比べ、本離れのスピードがゆるやかに見える。デイムスが見てきたように、大学の新入生たちの間で読書スキルに大きな差が見られるのはこのせいだ。だが私立学校でさえ、このトレンドに影響を受けている。