俳優・松本旭平が語る、役者人生の分岐点と30歳のこれから
――参加へと背中を押したものは何だったのでしょうか? 「最初は、自分が参加するとは思っていなかったんです。SEASON1は完全に視聴者として見ていましたから。でも、僕が芸能界を引退しようと思っていることを知った知人が、『だったら最後に挑戦してみたら?』と勧めてくれたんです。思い返せば、僕はそれまで一度も大きなオーディションに挑戦したことがなかったので、よし、受けてみようと覚悟を固めました」 ――オーディションには、どのような気持ちで臨まれていましたか? 「一つ選考を通過するたびに、自信につながりました。ただ、最後の101人に残って、初めて他の練習生を目の当たりにした時に衝撃が走ったんです。歌やダンスが未経験の子でも、すでに才能にあふれている人ばかり。その中で自分1人だけ年齢が離れていたので、たちまち『どうしよう…』と自分の未熟さを痛感しました」 ――やはり、最年長ならではの苦労があったのでしょうか? 「現場では、学校の先生みたいなところがありましたね。10代の子たちが大勢集まると、それだけでにぎやかになってしまいますから。でも歌やダンスに関しては、僕が教えてもらうことも多かったので、それ以外の面では自分にしかできない役割を探そうという意識がありました」 ――過酷なオーディション中、心の支えになったものは? 「やはり、応援してくださる方たちの存在です。順位が下がって心が折れそうになることもありましたが、『僕に投票してくださる方がいる限りは頑張ろう』と言い聞かせていました。同時に、参加者たちともそうやって声を掛け合っていましたね」
――練習生同士の交流で、他に印象に残っていることはありますか? 「期間中はテレビも見られないし、スマートフォンも触れない状況だったんです。中にはプレッシャーで泣き出す子も出てきてしまって…。それもあって、『1日1個、自分のことを褒めよう!』とみんなに伝えるようにしていました。オーディションを経験することによって、自分を褒めること、認めることの大切さを実感することができました」 ――20代で苦しい思いを味わった分、ご自身と向き合って濃い時間を過ごされたんですね。 「オーディション番組への挑戦は一つの分岐点になりましたし、多くのことを学びました。それに、5か月という短い期間ではありましたが、切磋琢磨(せっさたくま)し合った仲間同士の絆は感じています。今でも、会えば当時の感覚を取り戻させてくれる、『頑張ろう!』と奮い立たせてくれる存在です」 ――松本さんは普段から面倒見がいいタイプですか? 「昔は年下の子たちがとても苦手でした。僕には姉がいて、どちらかというと“かわいがられたい方”で育ってきたので…(笑)。でも最近は、現場でも年下の子たちと過ごす方が多くなってきましたね。先輩扱いされるのは、なかなか慣れません」 ――確かに、カンパニーをまとめる機会も増えたと思います。ご自身はどういうタイプの座長だと思いますか? 「みんなを引っ張るような、いわゆる座長らしい座長ではないと思います。若い共演者が多い現場では、必要に応じてアドバイスを送ることはありますが…基本的には『みんなで力を合わせて頑張りましょう』という感じ。たまにアドバイスを求められることもありますが、人それぞれ合う方法があると思うので、自分の経験をあくまでも参考程度に伝えるようにしています」