兵庫・斎藤知事に「公選法違反」疑惑、合法の線引きは? 選挙に詳しい弁護士が解説「今後の選挙活動にも大きな影響が…」
●ハッシュタグは「事前運動」になるのか?
――斎藤知事の再選の背景には、SNSで支持が広がったと指摘されています。そこで、あらためて社長の投稿を確認すると、この会社が10月1日、Xなどで応援のための「【公式】さいとう元彦応援アカウント」を立ち上げて運用をスタートしたと明記しています。また、SNSで拡散されていた「#さいとう元知事がんばれ」というハッシュタグについては、社長の投稿では9月にメルチェ側が提案したことになっていますが、斎藤知事の代理人は10月に入ってから陣営で決めたと説明しました。いずれにしても、こうした動きは、告示日(10月31日)前から始まっています。問題はないのでしょうか。 公選法129条では、立候補の届出が受理されたあとでなければ選挙運動はできないとしており、立候補届が受理される前の選挙運動は禁じられています(いわゆる「事前運動」の禁止)。そこで、今回のケースでは、届出受理前のSNSアカウントの運用が選挙運動に該当するのではないかという問題が生じ得ると思います。 SNSの「【公式】さいとう元彦応援アカウント」や「#さいとう元知事がんばれ」というハッシュタグは、文言上は、「来るべき知事選で斎藤元知事に投票してください」と県知事選挙での斎藤元知事への投票の呼びかけを直接しているわけではありません。 ですので、このハッシュタグだけを形式的に見れば、これは選挙運動には見えませんし、PR会社もその点を考えてこのような表現にしていると思われます。 しかし、今回のケースでは、斎藤知事については、議会の不信任決議を受けて失職を選び、再び知事選に出馬することが、多くの人たちがわかっていたという特殊性があります。 たしかに、形式的に見れば、直接的に特定の選挙での特定の候補者への投票を呼びかける文言はありませんが、ここでいう「応援」や「がんばれ」という言葉は背景事情等を前提に読んだ場合、来るべき兵庫県知事選挙を想定し、斎藤知事の再選を「応援」、つまり投票してほしいとうメッセージは、より明確に伝わります。 今回のケースの背景事情を踏まえると、個人的な感覚ではありますが、PR会社にしても、斎藤知事の陣営にしても、まあまあ「踏み込んだ」なと感じています。