東大、早稲田に明治、関東学院などで授業時間が「1コマ100分以上」に なぜ長くなったの?
検討会議では反対意見が続出
しかし、学内の検討会議に提案すると、反対意見が続出しました。授業時間を延ばすことに対して、教員の拒否反応が強かったのです。 川出次長はこう振り返ります。 「90分授業に慣れていた教員から反対意見が出るのは当然です。実際に、『90分でも学生の集中力を持続させるのが大変なのに、これ以上長くなったらどうするのか』という意見は多かったです。そのほか、単に1コマを10分ずつ延ばすと、一日のほぼ最後に組まれている5コマ目の終了時刻が午後7時を過ぎてしまうため、『学生の課外活動やアルバイトに支障が出たり、帰宅時間が遅くなったりして学生が困るのではないか』という意見もありました」 そこで授業開始時刻を午前9時から8時50分に早め、学食やエレベーターが混み合わない程度に昼休みを60分から50分に短縮。さらに、授業と授業の間の休み時間を少しずつ短くするなどして、終了時刻が午後6時40分になるように調整しました。 「遠方から通う教員もいれば、配布資料の印刷など、授業前や休み時間に綿密に授業の準備を行う教員もいます。授業時間の変更についての議論は、予想した以上に時間がかかるものでした」 そのため、何種類ものパターンを作って説明を重ね、何回もの会議での議論を経て、ようやく学内の理解を得ることができました。
10分延ばすだけでも大変
21年度に100分授業が始まると、想定していた成果が表れました。夏休みや春休みが長くなり、学生は留学やインターンシップなどに余裕を持って向き合えるようになりました。授業内容も、毎回の振り返りや小テスト、リアクションペーパーの提出などが多くの授業で行われるようになりました。 「たった10分間の延長は、学外の方からすると地味な改革に見えるかもしれませんが、慣れ親しんだやり方を変更するのは思った以上に大変でした。学年暦と授業内容の2つの改善を目的に始まった改革でしたが、実は個人的には授業内容の改善のほうは確信が持てないまま進めていました。ですから、今の状況には内心驚きもあります」 では、最も懸念されていた学生の集中力についてはどうでしょうか。 「導入前は心配する声が多かったのですが、蓋(ふた)を開けてみると、教員の苦労は多かったと思いますが、特に問題などは起きませんでした。他大学から聞いていた通り、浸透するのは早かったですね。4年目に入った現在、100分授業のメリットはあったと感じています。今後、さらに効果を検証していきたいと思っています」 大学によっては、授業時間を延ばすと同時に、前期・後期の2学期制を4学期制(クオーター制)に変更するところもあります。海外の大学との学年暦の違いを少なくし、学生が留学しやすく、また海外からの留学生を受け入れやすくするためです。これに関連して105分という授業時間を採用する大学もあります。(後編に続く)
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