「世界的企業に成長させた原動力と言っても過言ではない」…元執行役員が見た"ユニクロの仕組み化"すごい効果
なぜユニクロは世界的企業に成長できたのか。ファーストリテイリングの元執行役員で、教育・人材育成に携わってきた宇佐美潤祐さんは「ユニクロは日本企業の最大の弱点である将来の成長期待アップを、イノベーションをドライブする“仕組み化”を通じて行っている」という――。 【図表】企業価値創出力No.1をもたらすユニクロの仕組み全体像 ※本稿は、宇佐美潤祐『ユニクロの仕組み化』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。 ■「仕組み化」で日本企業の弱点を克服 通常仕組み化というと経営効率の向上、つまりROE向上に効くというように思われがちです。もちろんその要素も大きいのですが、ユニクロ(ファーストリテイリング)の場合はイノベーションをドライブする仕組み、すなわち将来の成長期待PER向上に効く仕組み化も同時に行っていることが他社と一線を画し、企業価値創出力No.1実現の大きな原動力になっていると私は考えています。 前回「伊藤レポート」の話をしましたが、2014年に「伊藤レポート」が出てからの10年を振り返り、日経ビジネスが「伊藤レポート10年 生みの親・伊藤邦雄名誉教授のメモににじむ無念」という興味深い特集記事を組んでいました。 日本企業はROEは9%台に改善はしてきたものの、PERは横ばい、つまり市場からの将来の成長期待は相変わらず低いという分析結果が出ています。 ユニクロは日本企業の最大の弱点である将来の成長期待アップを、イノベーションをドライブする仕組み化を通じて行ってきました。ここにユニクロの仕組み化の最大の特長があり、日本企業・読者のみなさんに大きな示唆があるのではないかと思っています。 ■根幹となる基本戦略「グローバルワン・全員経営」 ここではユニクロを企業価値創出力No.1企業にならしめた仕組み化の話をしていきます、その全体像を図表1に示しました。 PBR=ROE×PERという企業価値創出の方程式にユニクロの仕組みがどう連関しているかを示したものです。 前述した通り、生産性を上げる仕組みのみならず、イノベーションを促す仕組みが、意識を高める仕組み、成長を促す仕組みと相まって、ROEとPERを高め、結果としてPBR(企業価値創出効率)を高める構造になっています。各仕組みについては序章以降で詳しく話していきますが、ここでは仕組みの根幹となる基本戦略である「グローバルワン・全員経営」について頭出しをしておきます。 グローバルワン・全員経営は、ユニクロが事業を行うに当たり最も大切にしている考え方です。世界で一番良い方法を全員で実行する。それを通じて世界一を目指す最強の集団になる、という意味です。 世界で同じ経営理念、価値観を共有することは大前提ですが、その実現のための行動が必要で、その行動の基本となる考え方がグローバルワン・全員経営です。今自分がやっていることは本当に世界で一番良い方法なのかを真剣に考え、実行しては改善を繰り返し、全員が情報共有して、より良いものに進化させていく、それが集約されればすごい力になる。これがグローバルワンの本質です。