「安心の設計図」どう描く…給付と負担のセット、具体的な説明必要
将来不安が強まる中、持続可能で信頼できる「安心の設計図」を各党がどう描けるかが、社会保障分野では問われている。
医療、介護、生活支援が同時に必要となる85歳以上が2036年に1000万人を超える一方、現役世代が急減する「85歳問題」。85歳以上は通院が困難となるため在宅医療のニーズが急増するが、診療所は一人開業が多く、開業医の平均年齢は既に60歳を超す。慢性的な病気を複数抱える患者を総合・継続的に診る「かかりつけ医」機能の制度整備も動き出したばかりだ。
介護分野では、訪問介護職員の有効求人倍率が約14倍と断トツに高く、「お金があっても面倒をみてくれる人がいない」状況が現実のものとなりつつある。
老後に向けて蓄えておいた資産が不足する「長生きリスク」への処方箋の一つは、自ら働いて、基礎年金より手厚い給付が得られる厚生年金に加入することだ。だが、短時間労働者の厚生年金への適用拡大は、勤務先の企業規模要件が残るなど道半ばにある。高齢期に働くと、厚生年金が減額される在職老齢年金の見直しも課題といえる。
一方、社会保障制度に大きな影響を及ぼすのが少子化だ。23年の出生数は72・7万人で、24年には70万人を割る可能性もある。未婚の要因とされる非正規労働者の待遇改善や長時間労働の是正、子育て世帯への現金・現物給付や育児休業制度の拡充が急がれる。
社会保障給付費は対GDP(国内総生産)比で2割を超え、社会保険料収入と税収だけでは賄えず、国債発行に頼る状態が続いている。将来世代にツケを残さぬよう、全世代が能力に応じて負担し、支え合うことが必要だ。少ない人手でも機能を維持できるよう、テクノロジーを戦略的に使うことも欠かせない。
自民党は医療・介護・福祉分野の提供体制整備や処遇改善などを掲げるが、肝心の財源は公約に明記がない。住宅手当の創設などをうたう公明党も同様だ。