50代保育士が苦言を呈す「ジュースで水分補給をする子供たち」。なぜ、令和の親たちは子供の言う通りにしてしまうのか?
熱中症の危険度が日に日に高まりを見せている。そんななか子どもたちの水分補給に関するネット記事が話題を集めている。危機管理コンサルタントの平塚俊樹氏はこう話す。 この記事の他の画像を見る 「水を飲めない子どもが増えていると言った主旨の記事でしたね。ジュースやスポーツドリンクなどを与えたら、水を飲まなくなったと書かれていて、衝撃が走りましたね。親も水以外で水分補給をしている例もあるようです」。 厚生労働省の熱中症に関するサイトを参照するとこまめな水分補給が訴えられている。 「室内でも、屋外でも、のどの渇きを感じなくても、こまめに水分・スポーツドリンクなどを補給しましょうと書かれています。確かにスポーツドリンクの文字はありますが、それだけを飲んでいればいいという解釈にはなりませんよね。糖分過多も気になるところですし、何より子どもが飲まないという言い訳のもと、親が許しているような意見にはどうにも違和感が残ります」。 このように子どもに嫌われたくない親が増えていると感じるある保育士の女性から話を聞いた。 -----------------
館山はずきさん(仮名・59歳)は、保育士として長らく働いている。 「年々、増えているような気がします。子供に嫌われたくないのか、言う通りにしてしまう親。親が子に媚びへつらっている姿は日常茶飯事。こんなこと言ったらあれですけれど、我々が子育てしていたころとはまるで違って、すごく気になります…」。 例えば、食事の内容。 「忙しいことはもちろんわかっています。子供が喜ぶものを食べさせたり、飲ませたりしたいという気持ちも、そのほうが手っ取り早く食事が済むこともわかります。それでもお菓子やジュースばかりの毎日はやっぱり健康にはよくないんじゃないかな?って思うんです」。 おやつやジュースだけで夕飯を済ませてしまう、そんな話もゼロではない。 「食事の記録を提出していただくんですけど、親はそんなことは書きませんよね。それでも子供たちの話を注意深く聞いているとわかることはたくさんあります。さらに行動ですね。水や麦茶をまるで飲まない。お給食は好きなものしか食べない、そんな姿からピンとくること、結構あるんですよ」。 さすがベテランだ。 「白いご飯しか食べられないとか、汁物は冷めていないと無理だとか、いろんな注文をしてくる親もいますね。ただ、その子1人の保育園ではないので、対応できないことも多くあります」。 はずきさんは、こういった事例を前にするといつも感じることがあるそう。 「子供たちはとても柔軟です。なんだって飲めるし、食べられる。保育園という社会のなかで、そのチャンスが生まれることだってある。それなのに親が勝手に決めつけて、道を狭めてしまっているケースがあるなと思います。それから子供だけでなく、人は環境に順応するものです。家にジュースしかなければ、そりゃジュース飲みますよね。それと同じ。忙しく働いているから余裕がない気持ちもわかりますが、これは子供の将来にも関わることですからね、蔑ろにしないほうがいいんじゃないかな」。 親が当たり前のようにジュースやお菓子を食べていれば、食事を摂る重要性は、子供には伝わらない。
「この前も偶然、水分補給はジュースのみ、そんなご家庭にお話をしたばかりです」。 この炎天下で園庭で遊ぶ子供たちには、水分補給が欠かせない。 「保育園では麦茶と水を飲ませるようにしています。Aくんは元気いっぱい、お外でわんぱくに遊ぶタイプ。直後の水分は、喉が渇いているのでごくごく飲むのですが、それ以外はなかなか水分摂取がすすみません。不思議に思って聞いてみると水が嫌いだと話すんです」。 さらにAくんの普段の食生活を聞いて、はずきさんは度肝を抜かれたという。【後編】では、Aくんが毎日飲んでいるものを紐解いていく。 取材・文/悠木 律