実は離職の一因? 経営層も女性も知っておきたい「男性更年期」の事実
30代も他人事ではない? 男性更年期診断の難しさ
女性の更年期は、閉経を挟んだ前後5年と定義されており、40代後半~50代で経験する人が多い。しかし男性には「閉経」のような明確な区切りがないため、経験する年代や症状に関して、個人差が大きいという。
「テストステロンは一定速度で減少する人もいれば、ある年代で急激にガクンと減る人もいる。30代で『自分は更年期ではないか』と疑って受診する人もいますし、60代の患者もいます。40~50代中心とはいえ、どの年代でも起こり得る印象です」と、辻村教授は話す。
その理由の1つは、テストステロンが「ストレス」と深く関係していることだ。職場や家庭において強いストレスを受けると、若い世代でも一時的にテストステロン値が低下することがある。
「ところが、血液検査をしてみると実際にテストステロン値が低い患者は、全体の約3分の1程度に過ぎません。残り3分の2は、数値は悪くないのに、何らかの症状で苦しんでいる。なぜかというと、テストステロン値は『同年代に比べて、高いか低いか』は分かるものの、『本人の1年前と比べてどうか』は、分からないからです。最近急激に低下したのであれば、なんらかの症状が発生しても不思議ではありません」
テストステロンは、毎年(健康診断などで)測るようなものではなく、男性更年期の症状が出てはじめて測ることがほとんどだ。本人の過去と比較できないことも、診断を難しくしているという。
男性特有の「弱みを見せない」メンタル構造
昇進をきっかけに不調に陥ることも
どの年代にも発生する可能性があるとはいえ、男女共に更年期症状が多いのは40~50代にかけて。バリバリに仕事をこなす働き盛りの世代である。
「アンファー(ANGFA)」で男性の健康課題に着目したオムテックブランドの責任者を務める長内尚執行役員は、「40~50代になると、マネジメント層も一定数います。自身のパフォーマンス低下が、ともすれば部署全体の業績に関係してしまう。男女含めての話ではありますが、更年期の離職による経済損失は6300億円にのぼるという試算もあります」と話す。