実は離職の一因? 経営層も女性も知っておきたい「男性更年期」の事実
この試算は、労働政策研究・研修機構「NHK実施『更年期と仕事に関する調査2021』」に基づいたものだ。このデータによると、「現在更年期症状を経験している人」のうち、男性は管理職比率が高く、50~54歳では実に42.6%にのぼる。
【40~50代の就業状態と更年期経験者の就業状態】
「更年期症状を経験中の男性を対象としたインタビューでは、『昇進』をきっかけに不調に陥る人が散見しました。若手で仕事内容が限定されていた頃は、人前でのプレゼンも平気だったのに、責任ある立場になったとたん緊張するようになった例もある。恐らくプレッシャーやストレスが関係しているのでしょう。もう1つ、男性は総じて『他人に弱みを見せたくない』『誰かに相談せず、自己解決する』傾向が強いように感じます。そのため、周囲に更年期が理解されにくい面もありそうです」と長内執行役員は話す。
辻村教授も「男性更年期の認知の低さ」によって生じる問題点を指摘する。「これまでのように仕事が回せないと、同僚に対して引け目を感じます。朝起きられない、休みがちになる、そうした場合、家族に更年期に対する理解がないと、サボっているように見えてしまう。このような事柄が、患者を精神的に追い詰めていくのです」
更年期と言われて“安堵”する男性たち
職場における今後の課題とは?
個人的に意外だったのは、辻村教授からも長内執行役員からも、「男性は更年期と診断されると、ある種の安堵を覚える」という話が出たことだ。女性の場合「あなたは更年期です」と言われて、ポジティブな感情を抱くことはまずないように思う。どちらかというと、更年期はいつか向き合う憂鬱な事柄で「ついにきたか」と思うのではないだろうか。
「男性の場合、不調の要因をネットで調べ、更年期を疑って受診する人が多い。実際に更年期と診断されると、『やはり』と腑に落ちるんですね。原因が分かれば安心材料になりますし、次の段階として治療や生活面の対策も考えられる。逆に検査でテストステロン値が高いと『この不調の原因は何なのか』と悩みが深くなってしまいます」と辻村教授は話す。