米スタンフォード大教授らが分析、シリコンバレーのVCが大成長する投資先の見極めに重視する「3つの姿勢」とは?
米国の大企業の3分の1は、ベンチャーキャピタル(VC)からの支援を受けて成長したと、スタンフォード・ビジネス・スクールのファイナンス教授、イリヤ・ストレブラエフは分析している。VCが大きく利益を上げるには、大きく成長する可能性のある企業を見抜き、投資しなければいけない。 【動画で見る】米ベンチャーキャピタル数百社にインタビューした米教授の発見とは? 彼らはどうやってそのような企業を見極めるのか──、ストレブラエフらは900人のベンチャーキャピタリストにインタビューをし、その答えを『ベンチャー・マインドセット』(未邦訳)でまとめている。そこで明らかになったのは、VCが普通の企業と違う3つの姿勢だ。
ベンチャーキャピタリストは普通と違う考えをする
アマゾンやマイクロソフトなどの世界的大企業も、初めはスタートアップだった。しかし、これらの企業は当初から「ベンチャー流マインドセット」を重視し、ベンチャーキャピタル(VC)から支援を受けて事業を拡大できた。この姿勢によって、彼らは常に革新的で、エッジの効いた仕事を成し遂げられたのだ。 現代社会では優秀なリーダーたちがブレイクスルーを追い求め、大胆な賭けに出る。しかし、一般企業では、同調カルチャーのためにその達成が難しい。同意を重視し、何としてでも対立を避けようとする風潮が足を引っ張るのだ。私たちは長年企業による決断について研究してきたが、意思決定プロセスを変えない限り、大きな成功はおさめられないことがわかっている。 新製品の発売、合併・買収の打診、あるいは新たなリーダーを迎える場合などは、先の見通しは不確かで、リスクが山積みだ。そのような場合に大きな決断をするのは難しい。しかし、ベンチャーキャピタリストたちは、そうした判断を毎日のようにこなしている。そこで、私たちは、彼らがどうやって決断し、成功しているのかを調査した。そこから浮かび上がってきたのは、次の3つのマインドセットだ。
1.事実を掴むために、意図的に対立を引き起こす
あなたの組織は真実を追い求めるタイプか、それとも同意を追い求めるタイプか。1つ目であれば、リスクと不確定要素だらけの状況で、組織での対立は避けられない。 しかし、非常に多くの組織が、メンバーからの同意を得ることを重視しすぎている。しかし、多数決で勝った答えが正しいことはごくまれだ。全員からの同意を得るには、度重なる議論と数々の妥協が求められる。互いの共通項を見つけるのは政治においては重要だが、起業家精神のある者にとっては死刑宣告に等しい。 VCのやり方はその真逆である。彼らはスタートアップに意図的に論争させる。それはアマゾンのような大企業を創り上げられる、ほんの一握りの起業家を見極めるためだ。 彼らは、ビジネス上の対立を通じて相手の仮面を剥ぎ取り、その企業に投資する価値があるかどうか判断する。相手に関して知らない部分をなくし、メリットとデメリットを精査するための方法なのだ。そうすることで、ホームランを打てるスタートアップ企業を見い出し、投資に値しない企業を切り捨てられる。 世界的に有名なVC、アンドリーセン・ホロウィッツの共同創業者である米ベンチャーキャピタリストのマーク・アンドリーセンは、スタンフォードの学生たちに次のように語った。「私たちは、起業家たちの夢と希望を壊している」。有能なベンチャーキャピタリストたちは事実と証拠を求め、すべてを疑うのだ。 グーグルベンチャーズ(現GV)の創設者、ビル・マリスも同様だ。彼は米ドラッグストアのウォルグリーンに覆面調査員を送り込み、血液検査会社セラノスの血液検査キットを購入・調査させた。その結果、同製品には宣伝文句ほどの価値がないと判断し、投資を見送ったのだ。(註:セラノスは、数滴の血液でよくある疾患の有無が判断できるキットを開発し、多額の投資を集めたが、実際にはその効果はなく、元CEOは詐欺罪で有罪になった) ベンチャーキャピタリストはあらゆる可能性を考え、難しい疑問に向き合い、誰かの同意よりも事実を追い求める。本物のダイヤモンドを見つけるには、全員の同意よりも建設的な対立が不可欠なのだ。