「奄美の光」を世界へ 田中一村展が開幕 東京都美術館
鹿児島県奄美大島の亜熱帯の花鳥や風土を題材に、澄んだ光に満ちた独特の絵画を数多く残した孤高の画家、田中一村の大回顧展「田中一村展 奄美の光 魂の絵画」が19日、東京都台東区の東京都美術館で始まった。一村が奄美で描いた代表作「不喰芋(くわずいも)と蘇鐵(そてつ)」や「アダンの海辺」を筆頭に、神童と称された幼少期の絵画から、未完の大作、近年発見された初公開作品まで300点超の作品が展示され、感動を呼んでいる。12月1日まで。 東京都美術館や鹿児島県奄美パーク・田中一村記念美術館などが主催し、一村の回顧展としては過去最大規模。 一村は1908(明治41)年栃木県出身。東京美術学校時代、千葉県時代を経て、50代で奄美大島に移住した。出世とは無縁の暮らしの中で、自然の本質を写し取り、自己の表現を追求する絵画を数多く残し、77年に奄美市名瀬有屋の自宅で69歳で亡くなった。 18日には報道機関を対象とした内覧会・開会式があり、一村記念美術館学芸専門員の上原直哉さんは、作品を前に「奄美大島ではこの絵に描かれている世界観が今でも繰り広げられている。一村もこの自然の中で住まわせてもらっているという感覚の中で生き、作品に昇華していったのだと思う」と紹介。 東京都美術館の高橋明也館長は「一村は本当にグローバルな画家。奄美というローカルから世界的な視点で仕事をした」と称賛。一村記念美術館の宮崎緑館長は「奄美に向かって芸術の最高点を目指した一村の道のりが分かる展示会になった。特に多くの若い人たちにぜひ見て欲しい」と述べた。
内覧会では、回顧展のアンバサダーを務める俳優の小泉孝太郎さんが一村の作品をモチーフにした大島紬姿を披露し、開催をPRした。