外資系ホテルの「出店第4波」の特徴は「地方×安心価格」にあり 1泊=5万円超だけでなく1万円台の値段も
■今は外資系ホテル出店の「第4波」 立教大学観光学部の沢柳知彦特任教授は、コロナ禍以降に「外資系ホテル出店の第4波」を迎えていると指摘する。その大きな特徴は地方進出、さらにホテルの多様化だ。 これまでの進出主体はホテルブランドでいうと、マリオットやヒルトン、フォーシーズンズホテルなど欧米の大手ホテルチェーンが軸だった。 それがコロナ禍以降は変わった。シンガポールのカペラやタイのデュシタニなど、日本ではなじみの薄かったブランドが進出してきている。
価格帯の幅も広がっている。1泊5万円を超えるような高級ホテルが中心だったのが、最近は1泊1万円台のホテルも増えつつある。 アコーの「グランドメルキュール」やマリオット系の「フォーポイント フレックス by シェラトン」などは、ホテルの所在地によっては1泊1万円台で宿泊できる。 外資系ホテル出店の新たな波が到来した背景は、大きく分けて2つある。 1つ目はインバウンドの地方誘客だ。観光立国政策や円安などで訪日外国人がうなぎ登りで増えている反面、東京や京都ではオーバーツーリズム(観光公害)が問題となっている。
そこで政府はインバウンド客の地方誘客を進めている。その流れに外資系ホテルも乗っている。 ■不動産デベロッパーも求めている 2つ目は、ホテルを開発する不動産デベロッパーが外資系を求めていることだ。 日本人を含めて、世界各国の人が加入する会員プログラムを持つ外資系ホテルは、集客力が国内系ホテルより強い。 「建築費用が高騰したため、不動産デベロッパーたちはより高い収益を求めるようになった。インバウンドの宿泊比率が高く、客室単価を上げやすい外資系が求められている」と沢柳氏はみる。
なお、リゾートホテルに外資系がうまくマッチングしているという事情もあるようだ。リゾートホテルの従業員は住み込みが前提となるため採用が難しい。「研修体制を始めとする教育制度が優れた外資系は人材を確保しやすい」(沢柳氏)という。 インバウンドで活況を迎えるホテル市場。その「甘い蜜」に吸い寄せられる外資系ホテルの勢いは、とどまることはないだろう。
星出 遼平 :東洋経済 記者