ここにしかない海と農の絶景! みかん畑に囲まれた熊野古道を歩く「橘本神社~御所の芝」ハイキング
藤白峠を越えた先に「地蔵峰寺」
左右に笹のカーテンが続く山道を抜けると、右手にみかん畑が広がり、開けた空間に。ところどころに、収穫したみかんを運ぶ農業用の運搬機械であるモノラックが登場するのも、産地らしさが感じられてよかったです。 木々のトンネルを潜る山道と、景色が開けたみかん畑の脇道。それらが交互に繰り返し現れ、その隙間を縫うようにどんどん登っているうちに、頂上の行き先を示す「藤白峠 地蔵峰寺」の看板のところまでやってきました。 看板の示す方向へ進むと、県の重要文化財「地蔵峰寺」が現れました。本堂の中に総高3.1mほどの大きな地蔵尊が祀られていることから、地元では「峠の地蔵さん」の愛称で親しまれているそうです。
熊野路第一の美景「御所の芝」
地蔵峰寺は標高約290mの場所に位置しています。ハイキングとしては低山ですが、山道が険しかっただけになかなかの達成感。しかし、これで終わりではありません。私たちのゴールは、寺の裏手にある「御所の芝」です。 お天気に恵まれ、まさに絶景! 爽快な景色が広がっていました。 御所の芝は、江戸時代の地誌『紀伊国名所図会』で「熊野路第一の美景なり」と記されたほどの景勝地。和歌浦や淡路島、四国の島々まで見渡すことができ、その付近は「和歌山県の朝日夕陽百選」にも選ばれています。 平安時代、熊野詣に向かう上皇や法皇がこの場所に仮御所を造っていたそうです。言ってみれば、昔のお偉いさんたちが眺望の良さに惚れ込んで設けた、休憩テラスの跡地ですね。
地域の歴史を紡ぐ一面のみかん畑
無事に御所の芝の絶景を拝めたところで、折り返して帰路に着きました。上りは熊野古道がメインだったので、下りは旧熊野街道を歩いて山側の眺望を楽しみながら帰ることに。 御所の芝も素敵でしたが、地域の人々が長年築いてきた農業の歴史がくっきりとわかる一面のみかん畑の景色はとっても素晴らしかったです。 母いわく「てっぺんの景色を見る瞬間も好きだけど、どこから歩いてきたかなって振り返って、ああよくここまで歩いてきたなって、自分で自分の道のりを讃えると、満足感でいっぱいになるよ」と。ビギナーの私にとって、ハイキングの楽しみ方がじんわりとよくわかる体験となりました。
前田 有佳利(FootPrints)