【連載】会社員が自転車で南極点へ1 抱き続けた夢実現への一歩とは
サラリーマン自転車で南極点へ 大島義史が綴る夢実現への道のり
【連載】会社員が自転車で南極点へ 抱き続けた夢実現への一歩とは THEPAGE大阪
学生時代から自転車の旅に魅せられ「いつかは南極大陸を自転車で走りたい」という夢を抱き続けた神戸の会社員、大島義史さん(31)が今年1月、その夢を本当に叶えた。長い年月をかけ、会社そして家族と話し合い、有給休暇を取って南極点へと挑んだ。そんな彼は口癖のように言う「僕は冒険家じゃない、サラリーマンですから」。夢実現に至った道のり、そして南極での体験を本人が連載で綴る。
お金の工面は、日々の節約から始まった
南極大陸を自転車で走りたい──そんな思いを抱いたのは、もう10年も前になる。自転車旅行を趣味としている僕にとって“誰も走ったことがない場所”というのは、非常に魅力的に感じられ、南極大陸もそのひとつだった。 当時はまだ、大学生だった。長い休暇もあれば、アルバイトで得た資金もあった。時間も、お金も、自分のためだけに、使う事が出来たのだ。しかし、社会人になってから、僕は打ちのめされた。そう簡単に、休暇なんてとれるものではなかった。お金もそうだ。結婚し、子どもができると、家計は急に苦しくなった。だが、南極大陸を自転車で走りたい、という情熱はおさまらなかった。 社会人になってから、1週間程度の有給休暇を使って自転車旅行を続けていた僕にとって、南極大陸を自転車で走ることも、ごく自然なことのように思えたのだ。 「今度の有給休暇で、南極、行きたいんですけど・・・。」上司達に相談したのは、まだ、行けるかもわからない、5年前の2011年の秋の事だ。初めは信じてもらえなかったが、考課面接の度に、大真面目に話す僕を見て、会社の空気が少しずつ変わりはじめた。南極の話は、部長へ行き、本社の人事部へ行き、やがて、周囲の知るところとなった。 お金の工面は、日々の節約から始まった。娯楽は軒並み断り、休日は無料で楽しめる公園等で遊ぶ。電気の消灯を徹底し、家族3人6畳一間に身を寄せ合った。風呂の水を減らし、残った水は洗濯等に再利用した。節約に行き詰ると、安い仕事をいくつもかけ持って、帰宅後や休日に働いた。それでも、足りず、最後の最後は、借金に手を出した。 銀行、親類縁者、消費者金融にまで問い合わせた。遊びに使うお金なので、利率が結構高く、借りられる限度額も少ないものだった。冷たく対応されたこともあった。 手探り状態だった南極大陸への道を切り開いたのは、トライウエルインターナショナル社だった。この会社が、南極に基地をもつ唯一の民間会社「ANI」との交渉をサポートしてくれたのだ。