柴原瑛菜、全米オープンテニス予選突破!ダブルス元世界4位がシングルスで初の本戦出場「私はこの勝利に相応しい」<SMASH>
わたしも26歳になる。自分も若いと言えなくなるなかで、シングルスをやるなら今しかないという気持ちが大きくなりました。青山さんと分かれるのは本当に残念だったんですが、シングルスをやりたいっていう気持ちが勝って」 そこで昨年末のオフシーズンは、シングルスを想定したトレーニングや練習を本格的に積んできた。 「あの頃は、自分がシングルスでどういうプレーをしたらいいか、どうやってポイントを取れるのかイメージできていなかった」と、柴原は2年前を振り返る。だが今の彼女には、“サービス指導のスペシャリスト”と呼ばれる兄の柴原瑞樹氏と共に鍛えた、時速180キロ超えのサービスがある。そのサービスで崩したら前に出て、一発で決めるフォアの強打や、ダブルスで磨きをかけたボレーがある。 そして大きいのは、フィジカルとフットワーク。 「トレーニングや練習の仕方も色々と変え、今年に入った時には自信が持てるようになった。3セットになっても、相手より良いフィジカルだという自信もある」 その自信は今回の全米予選でも、初戦、そして緊迫の決勝でも、3セットの接戦を競り勝った事実として結実した。 柴原が歩んできた道のりは、彼女の生まれ育った環境を映すかのように、ユニークで多様性に満ちている。 アメリカから日本への国籍変更。大学からプロへの転向。そして、ダブルスでの成功から、シングルスへの挑戦。 そのような変化や挑戦に満ちたキャリアは、何に由来するのだろう――? そう問うと彼女は、「うーん……」と小さくうなり、しばし思いを巡らせてから、一気に話し始めた。 「家族の雰囲気もあるし、みんなのサポートがあったのが、本当に凄く大きいと思います。家族にとってもWTAツアーを離れるのは難しいことだし、たぶんスポンサーの皆さんにとっては、わたしがダブルスでツアーを周る方が、本当は良いと思う。それでもシングルスをやりたいというわたしの思いを、サポートしてくれました。そのサポートのおかげで自分にも自信が持てた。みんなのおかげで戦えて、こういう風に、最後にreward(成果)も出てくるというのは、本当に……」 そして、彼女は続けた。「Everything happens for a reason. And I don’t regret anything——全ての出来事には理由があり、私は何も後悔していない——」 「Deserve」の語源は、“De=十全”+“Serve=人のために働く/供給する”にあるという。 周囲の人々の願い応えたい、サポートしてくれる人たちに何かを返したい――その純粋なる想いこそが、柴原の言う「I deserve it」の真意だ。 現地取材・文●内田暁