石破茂氏、野田佳彦氏、山本太郎氏の「演説」の評価は? 自民惨敗の理由も浮き彫りに
街角やテレビ中継で時々目にする政治家の演説。その技量は、政治家の本質とはリンクしないケースが多々あるものの、巧みな演説は人を惹きつけ、票となって議席に反映されている。AERA 2024年12月2日号より。 【写真】鉄道、カレー作りなど多趣味で知られる石破茂氏 * * * 衆院選で148議席を獲得した立憲民主党代表の野田佳彦(67)も、演説の「名手」として知られる。2011年の民主党代表選では自身を「どじょう」になぞらえて素朴な人柄をアピールした。22年に衆議院で行った安倍晋三元首相への追悼演説も評価が高い。政治家やビジネスパーソンへ話し方トレーニングを提供するkaeka代表で、スピーチライターの千葉佳織さんは言う。 「声のスピード、トーン、感情のこめ方など話す技術と内容の深掘り、両軸を駆使しています。情景表現や比喩もうまい。安倍元首相の追悼演説では聴覚情報や五感で感じたことをうまく盛り込み、安倍さんとの具体的な会話や当時の感情なども交えて聴衆を惹きつけました」 一方の自民党。衆院選では惨敗し、連立与党で過半数を割り込んだ。首相で自民党総裁の石破茂(67)は、元来は「演説がうまい」とされることが多い。最大の武器は「個性」だ。 「石破さんは声のトーンやキャラクターが独特で、彼にしかできない『型』があります。個性は政治家の演説では強烈な武器になります」(千葉さん) ただ、衆院選では応援弁士としてはバリューを発揮しきれなかったと千葉さんは見る。 「応援演説に行く党首は、野田さんなら『政権交代、お金の使い方を変える』とか、玉木さんなら『手取りを増やす』など、わかりやすく、絶対にこれを語るという軸があります。しかし石破さんは今回、自民党の変化を伝える明快なキーワードを生み出せませんでした」 自民党惨敗の最大の要因は巨額の裏金による信頼失墜だろう。そして、選挙期間を通して不信感を払拭できなかった。明治大学の堀田秀吾教授(法言語学)は選挙戦についてこう語る。 「10月の衆院選は、いかに目の前の聴衆と関係を築き、熱狂させられるかが勝負でした。オーディエンス・デザインをどう設定したか、どれだけラポート・トークで聴衆を沸かせられたかが、結果に直結しています」