石破茂氏、野田佳彦氏、山本太郎氏の「演説」の評価は? 自民惨敗の理由も浮き彫りに
街頭演説の聴衆には多くの「層」がある。演説を目当てに集まるコア層、たまたま通りかかり関心を寄せる人、遠くから聞き流す人、SNSや報道で目にする人。ターゲットをどこに置き、どの層まで意識するかがオーディエンス・デザインだ。 そして、ラポート・トークとは気持ちを述べたり共感を示したりし、感情に働きかける話法のこと。対になるのが、事実や情報を中心とするレポート・トークだ。堀田教授は続ける。 「例えば3倍増の議席を得たれいわ新選組の山本太郎さんは、目の前のファン、コアな聴衆に訴えかけるのが非常にうまい。そして、数字を交えつつも『皆さんの力で』『一緒に変えていこう』などとラポート・トーク中心の話し方をします。挙手させたり、質問させたりする双方向型のコミュニケーションも多い。目の前の聴衆が沸くと、SNSなどでも広がりやすくなります。玉木さんも同様です」 一方、業界団体などの支持基盤が多岐にわたる自民党の政治家は、「何を語ったか」を問われやすい傾向にある。 ■演説に惑わされない 「その場にはいない支持層にも気を配る必要があり、オーディエンス・デザインが広くなりがちです。内容もレポート・トークが多くなる。しかし、今回は有権者の心が離れた状態での選挙戦でした。目の前の人を熱狂させられなかったのは失敗です」 このように、政治家の演説には様々な技術がある。トレーニングを積み、意図して駆使するものもいれば、自然と身に付けていったものもいるだろう。演説がショート動画として広く拡散されるケースも増えてきた。ただし、演説の技量は必ずしもその政治家の本質を意味しない。政治家に話術が欠かせないように、私たち有権者には、演説だけに惑わされないリテラシーが問われてくる。(文中一部敬称略)(編集部・川口穣) ※AERA 2024年12月2日号より抜粋
川口穣