アトランティックサーモン、ブランド名は「フジ アトランティックサーモン」。

回転寿司でも人気の「サーモン」。その多くは、ノルウェーで養殖された「アトランティックサーモン」だ。 【全画像をみる】丸紅、アトランティックサーモン「国産・陸上養殖」で販売開始。25年春に全国へ、イオンらと交渉 総合商社の丸紅が、日本国内で陸上養殖したアトランティックサーモンの販売を開始したと発表した。今までノルウェーなどから空輸で長い時間をかけて店舗や食卓に届けられてきたアトランティックサーモンが、最短で「水揚げ当日」に届くようになるという。輸送時のCO2排出量の削減にもつながる。 2025年度には4700トン、2027年度には5300トンの生産を目標に、販路の拡大を進めていく方針だ。丸紅では、鮮魚専門店の角上魚類や、丸紅と関係の深いイオングループの各スーパーと販売交渉を進めており、一部店舗から提供を開始し、2025年4月以降に全国のスーパーなどでも購入できるように安定供給を目指すとしている。

富士山の麓で育った、アトランティックサーモン

生産地は富士山の麓、静岡県小山町。ノルウェーで陸上養殖事業を手掛けるProximar Seafood AS（プロキシマーシーフード、以下プロキシマー）の日本法人が卵から育てたアトランティックサーモンを、丸紅グループの販路を生かして販売する。 プロキシマーは2018年に静岡県小山町を建設地に選定すると、2021年には卵から稚魚をかえして一定の大きさになるまで育てるプールの建設を着工。2022年に完工後、アイスランドから取り寄せた12万5000粒の卵を投入し、養殖を開始した。2022年には、丸紅と国内での独占販売契約も結んだ。その後、2023年には出荷サイズにまで成長させるためのプールも完工し、アトランティックサーモンを移送して成長を見守っていた。同社の陸上養殖施設は、サケ類の中では国内最大級だという。 2年の養殖期間を経て、アトランティックサーモンは1匹5キログラムにまで成長。今回本格的に販売を開始する。

完全閉鎖型の陸上養殖、3つのポイント

プロキシマーでは、「完全閉鎖型」の陸上養殖システムを採用している。丸紅の食品素材部でこのプロジェクトを担当している安藤悠真さんによると、特徴は大きく3つあるという。 1つ目は、環境負荷の低さだ。 プロキシマーのシステムでは、99.7%の水を循環利用しており、エサの食べ残しや魚の排泄物などもろ過や微生物を用いた分解して取り除き、海への流出をほぼゼロにできる。加えて、養殖している魚が環境中に流出して生態系に影響を与えるリスクも抑えられる。 2つ目は、魚にもやさしい点。陸上養殖だと、水温や流速、水質など、プールの環境を完全にコントロールできるため、魚へのストレスを低く保てる。寄生虫などの影響も受けない（管理できる）ため、ワクチンや抗生物質などの使用も抑えられる。 また、安藤さんは、トレーサービリティの管理も容易で、消費者への安心を提供できる点もメリットの一つだと指摘した。なお、丸紅広報によると、現時点で魚介類の環境認証であるACSやMSCといった認証は取得していないものの、「今後ASC認証の取得を目指していきます」（丸紅広報）という。