特ダネのために「無実の人」を殺人犯にする…警察、検察の「世紀の大失態」に加担したマスコミの無責任体質
---------- ――こんどの事件を君はどう推理するのか。 答 女をめぐって専務に対する恨みでしょうね。それに一人の犯行ではないよ。三人以上だと思いますね。 ――侵入口は……。 答 そりゃ、シャッターを上げて正面から堂々とはいったと思いますよ。 ――どこから逃げたか。 答 やはり裏口を飛び越えたでしょうね。 ――カッパや油について。 答 それですよね。問題は……。(やや考えてから)でも犯人がわざわざカッパを着て行きますかね。油も会社にはいろいろある。モーターボート(専務用のもの)もあるからね。事件が片付いたら私の潔白を証明してもらうために警察などに対して何らかの処置を取りたいと考えている。 ――告訴するということか。 答 そうだ。 ---------- ■「検証」で触れられなかった単独会見 毎日新聞の「検証」で取り上げた「刑事たちの執念と苦しさ……」などとの表現は、静岡県版の記事だったのだろう。筆者が調べた都内版の毎日新聞縮刷版には掲載されていなかった。 記事を読む限り、8月18日の逮捕までは袴田さんに「自白」は強要されていなかったようだ。 まず、当時の記者たちは7月5日朝刊で、「四日は九時間にわたってHを調べた」とある。それでも警察に対して、全面的に否定した袴田さんの供述をそのまま掲載している。 その取材を基に、8月4日に袴田さんへの単独会見を2時間余も行った。 そこでも、「警察は事件後、間もなく君を夜中までぶっ通しで九時間以上にわたって調べた」と常軌を逸した取り調べを行っていたことを明らかにしている。 単独会見の記事を読めばわかるが、袴田さんは自身の「無実」を一貫して主張、「私なら小刀は使わない」など袴田さんなりの事件の「見立て」を説明している。 2時間余にも及ぶ単独会見のわずかな部分だけが記事になったのだろう。 当然、テープレコーダーをで録っていたはずだが、今回の「検証」では単独会見どころか、その内容は一切、明らかにされていない。