住宅ローンの繰り上げ返済はやめたほうがいい? 銀行員が事例をもとにデメリットなどを解説!
住宅ローンの繰り上げ返済を決断する前に考えてほしいこと
私は銀行員として、繰り上げ返済にとにかく反対でもなければ、どんどん繰り上げ返済しましょう!という肯定派でもありません。 もちろん銀行員は、基本的に住宅ローンの繰り上げ返済をとりあえず思いとどまるように説得するのが仕事なのですが、持論は別のところにあります。 そこで、住宅ローンの繰り上げ返済を決断する前に考えてほしいことをお伝えしたいと思います。 繰り上げ返済するなら「自分のお金を色分けして」から 住宅ローンの繰り上げ返済は、支払い金利が減るというメリットが確かにあり、その一方で、団体信用生命保険という安心や、将来への備えも必要な点には注意を払う必要があります。 そうなると、どちらを選ぶべきか悩んでしまうかもしれません。でもそれでいいと私は思います。決断しきれないのは、自分の中で疑問や不安が払拭されていないわけで、結論を焦る必要はないのです。 そして、なにより大切なのはバランス感覚だと考えています。手元にあるお金を色分けして「普段使うお金」「将来に備えて蓄えるお金」「自分のメリットを追求するお金」といったように、振り分けるのが効果的です。 特に、自分のメリットを追求するお金は「余剰資金・余裕資金」などとも呼ばれるもので、自分が繰り上げ返済で利息を減らすことをメリットだと考えれば、そのお金を振り向けてもいいと思います。 繰り上げ返済しない余剰資金なら「お金に働いてもらおう」 お金を色分けすると説明しましたが、このなかで住宅ローンの繰り上げ返済に充てるお金以外で、すぐに使わない余剰資金なら「お金に働いてもらう」という検討を銀行員としておすすめします。 たとえば一つの考え方として、繰り上げ返済に回したお金を仮に運用していたなら、そこで得られたかもしれない利益を逃す「機会損失」になってしまうかもしれません。 もちろん、確定利回りでしかも住宅ローン金利よりも高利回りの金融商品などは、私の知る限りありません。 ですから、一部の記事でよく用いられる「住宅ローン金利は0.3%くらいだから、繰り上げ返済しないでその資金を年利2%で運用できたらこれだけ手元のお金が増えることに…」といった内容は楽観的すぎると考えます。 一方で、投資や運用の利益は不確実でも「投資や運用をしなかった場合の機会損失」は確実という考えもあります。 つまり、投資や運用の利益は不確実で、値上がり・値下がりがともにリスクなのです。そしてこれらは、誰にも確実な予想はできません。しかし、投資運用をしなければ、それを行った場合に期待できたはずのリターンも得ることはできません。 「投資や運用をしない限りは、リターンを得る機会を失い続けている」のは間違いなく言えることなのです。 銀行員としては、運用商品のノルマ解消に利用したいが… 住宅ローンの繰り上げ返済を受け付けた場合、銀行員としての私はメリット・デメリットを説明したうえで、お客様に決断をしてもらいます。 このとき、繰り上げ返済をやめて投資や運用の提案まで一気に突き進むことは控えるようにと、銀行から指示されています。 それはなぜかと言うと、過去のトラブル事例で上記のように住宅ローンの繰り上げ返済を希望するお客様に繰り上げ返済を止めさせたうえ、運用まで一気に提案して成約してしまい、その運用で損失が発生したことがあったからです。 投資は自分の判断だったわけですが、当初は住宅ローン繰り上げ返済が目的だった顧客なので問題が深刻化したのです。 また、銀行員にはノルマがあり、取り扱う運用商品も限定されているので、どうしてもその範囲でしか話ができないという「バイアス」が働いてしまうことは否めません。 銀行によって運用商品に対するスタンスは違いますが、「繰り上げ返済を止めさせたうえ、運用まで一気に提案」するような銀行には気をつけましょう。
まとめ
今回は住宅ローンの繰り上げ返済について解説してきました。 銀行員としては、繰り上げ返済をしたほうがいいのか?しないほうがいいのか?という問いに対して、結論を申し上げにくいのが実態です。 結局、繰り上げ返済すべきかどうかについては、自分自身で決めるしかないわけですが、自分や家族だけで考えても不安要素が残るなら、他の人の意見に耳を傾けてみることも必要ということです。 この記事が、皆さんの参考になれば幸いです。 666bd87a905bd4cef2000000
加藤隆二