尹大統領は「3連敗」から何を学ぶか【コラム】
7月24日、大統領室の前庭で開かれた与党「国民の力」の新指導部との晩さん会は、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の複雑な心境が垣間見える会合だった。あえて党代表選挙で敗れた候補まで招待し、ハン・ドンフン指導部に対するお祝いムードを弱めるとともに、尹大統領のそばに落選者たちの席を設けることで、「味方」と「敵」を分けているようだった。大統領室が公開した写真と映像からは、尹大統領とハン代表が目を合わせ、二人で話し合う姿は見当たらない。「代表中心に団結すべき」という建前の代わりに、「困難なことがあったら、ハン代表に任せっきりにせず、周りでサポートしてほしい」と語った尹大統領の本音はおそらく、「ハン代表が勝手に動き回らないよう、しっかり監視しろ」ということだろう。望まなかった結果に直面した尹大統領の自己防衛かもしれない。 尹大統領と対立したハン代表の圧倒的な勝利は、党員の「尹錫悦見切り宣言」に他ならない。「裏切り者フレーム」はむしろ大統領との差別化を浮き彫りにする結果となり、「大統領と与党代表が敵対すると政権を失う」という党員たちの長年の恐怖をもしのいだ。党員たちは組織票どころか「反尹(錫悦)」候補に投票することで、この2年間の国政運営に対して拒否権を行使した。尹大統領にとっては、昨年のソウル江西(カンソ)区長補欠選挙、今年4月の総選挙の惨敗に続き、支持基盤の党員たちにまで3連続で審判を下されたわけだ。 党内では党務介入の疑惑が持ち上がった尹大統領の夫人、キム・ゴンヒ女史の携帯メール「既読無視」が物議を醸した時、すでに「勝負あり」と判断した人々が少なくなかったという。2022年、大統領室主導でイ・ジュンソク前代表を強制的に追い出した「イ・ジュンソク・トラウマ」が働いたうえ、よりによって党員が快く思わないキム女史が全面に登場したのが「戦略ミス」だったという分析だ。尹大統領に対する期待は「任期さえ全うできればありがたい」というところまで落ち込み、たとえ検証されたことのない素人政治家でも、野党の対抗馬として立てなければならないという切迫感だけが残った。 任期の折り返し地点も回っていない時点で「未来の権力」が党の顔になったが、民意→党員たちの意向→尹大統領の意向の好循環は依然として望むべくもない。総選挙の壊滅的な敗北も、尹大統領を変えることはできなかった。選挙後に掲げた人事刷新は、一部長官を変えることで終わる見通しだ。辞意を表明したハン・ドクス首相は、いつの間にか留任となり、梨泰院(イテウォン)惨事の責任者であるイ・サンミン行政安全部長官は、5年間尹大統領と任期を共にする勢いだ。賛成世論が高い「(殉職海兵隊員)C上等兵特検法」には2度の拒否権で対抗た。すでに不可能になった野党との協力に基づく国政運営の代わりに、この2カ月間大統領室の秘書官たちを集中的に次官に任命し、「次官政治」を通じた部署掌握に乗り出した。キム女史のブランドバッグ疑惑をめぐる二転三転の釈明と、大統領警護室まで出向いた「出張聴取」が物議を醸していることを見る限り、「だめだ」と言える人をそばに置いているようでもない。尹大統領の周りでは大統領に苦言を込めたショートメールを送り、ブロックされたという「証言」も聞こえてくる。 大統領の「我が道を行く」姿勢は結局、総選挙惨敗の打撃がそれほど大きくないことを意味する。 尹大統領は過半数議席でない限り、第22代国会の108議席も第21代国会の113議席とあまり変わりないという認識を持っているという。弾劾阻止線は守ったし、これまで国会に助けられた覚えもないから、「いままで通りにやる」ということだ。ところが、尹大統領が看過していることがある。民意のダイナミックさだ。与野党を問わず「大統領弾劾」はもはやタブーではない。一応、尹大統領とキム女史は朴槿恵(パク・クネ)元大統領を反面教師にしているようだ。キム女史はブランドバッグ受け取り疑惑に謝罪しなかった理由として、「朴大統領と同じ轍を踏まないため」を挙げているという。朴元大統領が国政壟断疑惑が持ち上がった当時、いわゆる「タブレットパソコン」報道を受けて謝罪し、支持率が落ち込んで弾劾までつながったということだ。朴元大統領の弾劾事由は「陰の実力者」による国政壟断だという本質を無視した主張であるうえ、尹大統領夫妻が参考にすべきなのはその点ではない。朴元大統領は回顧録で弾劾過程について言及し、「2016年の総選挙で第一党を逃したのは政府と与党に対する国民の最初の警告だった。それによって民意を謙虚に受け止め、変わるべきだと考えたにもかかわらず、周囲にきちんと目を配ることができなかったことは痛恨の極みだ」と書いた。尹大統領が「学習」しなければならない部分は、総選挙敗北の警告灯を無視して暴走し弾劾された元大統領の痛烈な反省だ。尹大統領に残された選択肢は民意と党員たちの意向を受け入れるかどうかだけだ。尹大統領の政治的運命がこれにかかっている。 チェ・ヘジョン|論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )