<中国が海外渡航を禁止?>「勤務先へパスポート提出」「海外旅行の回数制限」…一部の中国人の間で今、起きていること
本格的な夏休みシーズンを迎え、中国人の海外旅行がラッシュとなっている。今年6月、オンライン旅行販売大手の携程集団(トリップドットコムグループ)の発表によると、24年上半期に中国人に最も人気の海外旅行先は日本で、欧米へのビザ申請も増加しているという。同程旅行などの調べでも、短期入国ビザ免除のタイ、ほかに韓国、マレーシアなどの近場の国に加え、パリオリンピック・パラリンピックで注目されるフランスやサッカーの大会が行われるドイツなども人気だ。 筆者の知人もまさにいま、夏休みで日本を訪れており、東京や大阪の写真をSNSに多数投稿している。中国でここ数年流行している「游学」(視察・見学ツアー)のほか、温泉旅行や美術館巡りを満喫している人もいる。 だが、経済的に余裕があり、海外旅行に行くことができる中国人の中には、海外旅行をストップさせられている人がいるという。一体どういうことなのか。
「上層部からの指示」でパスポート提出
中国のある大学で教授をつとめる筆者の知人は、声をひそめながら、次のように打ち明ける。 「私が知っているだけでも、出国を禁止されている先生が複数います。学部長から言われてパスポートを学校側に預けているので、海外旅行に行けないとぼやいていました。もちろん、大きな声で不満は言っていませんが、ほかの大学や高校の教師などの間でも同様のことが起きているらしいです。 私の大学は幸い大丈夫でしたが、コロナ禍のときの悪夢を思い出しました。知り合いの中には、パスポートを取り上げられる前に、早く海外に行こうと、夏休みのスタートと同時に急いで出国した人もいます」 この知人によると、パスポートを学校側に提出しなければならない理由は、明確には公表されていないという。問い合わせても「上層部からの指示」というだけで、取り合ってくれないそうだが、職員である以上、拒否はできないという。
米ラジオ・フリー・アジア(RFA)の報道によると、ある地方の県(省や市よりも小さい行政単位)では、6月、教育当局がすべての教職員を対象に、学校の共産党事務所にパスポートを提出するようにという「通知文」が送られたという。 同報道では、党事務所は学校に設置された新しい行政事務所とのことだが、詳細は不明だ。どの程度の規模で、どの省のどの県で行われているのかも把握できないので「真偽はわからないいう人もいますが、現に私の知り合いも何人もこの情報を知っていましたから、怖いなと思っています」とこの知人は語る。