なぜ令和ロマンはM-1連覇を達成?「この素晴らしい空間を維持するために…」 根底に〝利他〟のスタンス
根底に「利他的」なスタンス
2024年、惜しくも『ABCお笑いグランプリ』で令和ロマンに敗れ、準優勝となった青色1号の榎本淳は、大会の舞台裏についてこう語っていた。 「ほかの漫才師と比べても、くるまが特殊なんですよ。『ダウ(筆者注:ダウ90000)は人数が多いから、漫才コントの登場人物を増やそう』とか、『青色1号とダウがしっかりしたコントをやるだろうから、俺らは変な漫才をしよう』みたいなことを本番ギリギリになって決めてたらしいので」<『週刊プレイボーイNo.51』(集英社)より> ある時期から、パーマとメガネでボケらしい見た目を演出。加えて、昨年のM-1では「ジョニー・デップとお揃い」だという高級ブランド・サンローランの肩が尖った特徴的なスーツとオールバックで“ラスボス感”を出したという。 また、M-1決勝はネタの規定時間4分を超過しても強制終了がないため、審査員により強い印象を与えるべく、意図的に2本目を5分尺(実際には、約4分50秒)で披露。大会のグレーゾーンを突くM-1巧者ぶりも存分に示した。このように、賞レースにおける高い分析力が注目されてきたくるまだが、それを臆することなく貫禄のあるパフォーマンスとして昇華させるには、もう一つ別の要素が求められるように思う。 前述の『漫才過剰考察』の中で、くるまは芸歴1年目でM-1準決勝に進出し、ネタを披露したときの心境を振り返って「この素晴らしい空間を維持するために、僕はここまで連れてこられたんだ」と書いている。 またその後、コロナ禍に入って劇場がストップし、コンディションが悪い中で『NHK新人お笑い大賞』で優勝したことを受けて「これは運命だ」と感じ、「M-1の役に立とうと思った」と続けている。“運命論者”とも言えるくるまにとっては、コンビの優勝よりも“M-1が盛り上がるように整えること”のほうが重要なのだろう。 2023年のM-1優勝後にメディア出演を控え、劇場出演をキープしながら活動していたこともうなずける。また、根底に「利他的」なスタンスがあるからこそ、「トップバッターは優勝できない」という固定観念に縛られず、2年連続のトップでありながら揺るぎない漫才を披露できたのではないか。 2度目となる優勝会見で語られた、くるまの言葉がそのことを象徴しているような気がしてならない。 「最終決戦の3組が終わった時点で、優勝ぐらいうれしかったです。『できたー! 良いM-1だったなー!』ってめっちゃ思っちゃって。結果発表のときもセットとかずっと見ちゃって『良かったなぁ』って。プラスアルファ(筆者注:優勝という)ご褒美をもらったという感じですかね」