なぜ令和ロマンはM-1連覇を達成?「この素晴らしい空間を維持するために…」 根底に〝利他〟のスタンス
演技力、胆力と巧みな設定
まずは、前述した『THEゴールデンコンビ』の取材中、野田クリスタルが語っていた言葉に目を向けてみる。先ほどと同じ質問(「相手の見方が変わった」かどうか)に対し、野田はコンビを組んでみて気付いたところがあったという。 「けっこう時間をかけて練るのが得意な人だから、今回はシステム的な力を発揮してくれると思ってたんですけど、むしろ演者としての即興力が高いっていう。『普通にコントやれるんだな』と思いましたね」 これにくるまは、喜びの声を上げて「実は、そもそもそっちが得意なので、それが出せてよかった」と口にしている。もちろん“即興力”には言葉の瞬発力も含まれるだろうが、何より番組の中で光っていたのはくるま特有のキャラに入った即興演技だ。「役に入るのが恥ずかしい」と話す漫才師も多い中、くるまはしゃべくり漫才のネタでさえちょっとした演技を差し込む。 考えてみれば、2023年、2024年、ともにM-1決勝の2本目は漫才コントだった。加えて、どちらも登場人物が多いネタなだけに「演じ分ける能力」、観客に理解させるまでの緊張感に耐えうる、ある種の「胆力」が必要となる。いずれかが欠ければ、みるみる笑いが削がれる類のネタだ。 そもそも設定に入って笑わせるネタに自信を持っているのだろうが、一方でよく仕組まれた設定であることにも気付く。彼らが披露した2本目のネタには、共通して“観客が想像しやすい”というアドバンテージがあるからだ。 2023年のM-1グランプリ最終決戦ネタ「町工場」は、2015年、2018年に放送された人気ドラマ『下町ロケット』(TBS系)を彷彿とさせるし、2024年の「タイムスリップ」は、プライムタイム・エミー賞を沸かせたアメリカのドラマ『SHOGUN 将軍』(アメリカ:FX、Hulu、日本:Disney+)の設定とその登場人物である樫木藪重(浅野忠信)、東宝のアニメ映画『クレヨンしんちゃん』のシーンなど、さまざまな映画やドラマを参考にしたと、優勝後の出演番組でくるま自身が語っている。 大衆のイメージを利用し、各々の頭に明確に描かれるであろう画に対して彼らはファンタジーな笑いを投入していく。設定からして、よく整えられているのだ。