クルスク州で攻撃のウクライナ軍、装甲車でロシア兵を踏みつぶす 「殺気」の表れか
あらゆる困難をものともせず、ウクライナ軍はロシア西部クルスク州で5日に攻撃を開始した。空挺強襲軍の部隊を中心とする襲撃(アサルト)グループは、ウクライナ軍が保持するおよそ650平方kmの突出部の北側の塹壕や掩蔽壕から展開し、突出部全体でロシア軍に兵員数で3対1の劣勢にありながら3kmほど前進を果たした。 【画像】ベルディン村、その周辺の薄く雪に覆われた野原で行われた戦闘 突出部の北東周縁に位置するベルディン村やその近辺で行われた戦闘は激しいものだった。攻撃するウクライナ軍部隊、防御するロシア軍部隊のどちらにもドローン(無人機)が次々に襲いかかった。ウクライナ軍の歩兵とロシア軍の歩兵は、互いにグレネードランチャー(擲弾発射機)を撃ち合えるほどの接近戦を繰り広げた。 ウクライナ軍のストライカー装甲車1両の乗員は、米国製のこの8輪車両そのものを武器とし、徒歩で逃げまどうロシア兵らに突進して少なくとも1人を轢いた。 薄く雪に覆われた野原であったこの残酷な出来事は、ウクライナ軍の監視ドローン少なくとも2機によって冷徹に観察されていた。映像では重量約17tのストライカー1両が雪原を走り回り、無防備なロシア兵に狙いをつけるように急旋回を繰り返している。 通常は乗員2人で、機敏なストライカーが不運なロシア兵1人をはねたのは映像から明らかだが、その生死は不明だ。いずれにせよ、ロシアが拡大して2年10カ月半たつこの戦争では両軍合わせて100万人以上が死傷しており、このロシア兵はそれに新たに加わったひとりにすぎない。 異例だったのはこの交戦の状況だけだ。ロシア兵たちはなぜ孤立無援だったのか。ストライカーの乗員はなぜ上部に搭載した機関銃で射撃せず、わざわざ大きな労力を費やし、また大きな危険も冒して彼らを直接轢こうとしたのか。 どちらの問いも答えを考えることはできる。ウクライナ軍がかなりの速さで進撃し、ロシア軍の守備隊を奇襲したのであれば、ロシア側のいくつかの陣地や、不運にもそこにいた兵士らの遮断に成功した可能性がある。実際、こうした混沌とした戦闘は、昨年8月にウクライナ軍の強力な部隊が侵攻して以来、クルスク州での戦いの特徴になっている。