仏文化施設の訪問者数はコロナ禍以前まで回復。ルーブル美術館とポンピドゥ・センターは前年割れ
フランス文化省の研究・予測・統計・文書局(DEPS)が発行する世界遺産や文化施設への来訪者数に関する年次報告書「パトリモスタット」の最新版によると、2023年の1年間に国内1450以上の博物館と4万6000以上の建造物のいずれかを訪れた来訪者の総数は、2022年より13%、2019年より7%増加したことが明らかになった。 前年と比較して来場者数が平均以上増加した施設は、オルセー美術館(18%)、オランジュリー美術館(22%)、ケ・ブランリー・ジャック・シラク美術館(チケット販売数が140万枚で40%増)のほか、国定記念物であるモン・サン・ミッシェル(23%)やコンシェルジュリー(41%)など。他の施設では大きな増加はみられず、中には減少している施設もあった。ベルサイユ宮殿の来館者数は840万人で2%増だったが、ルーブル美術館は880万人で7%減、ポンピドゥー・センターの来館者数は、数週間にわたるストライキの影響で20%減の260万人となった。 報告書によると、2023年にフランス国民の62%が何らかの文化施設を少なくとも1回は訪れており、コロナ禍以前、2019年の63%に近づく数字となった。しかし内訳を見てみると、59%が歴史的建造物を訪れたのに対し、博物館や特別展を訪れた人は34%で2019年の41%から減少しており、美術館を訪れた人はわずか13%だった。 また、注目すべきことに、フランス国民の10人に6人以上が、近代美術や現代美術の美術館や展覧会、建築、デザイン、装飾美術の美術館、写真専門の美術館などの施設を一度も訪れたことがないと回答。一方で、海外からの観光客、特にアメリカ人観光客は2019年の水準に戻り、中でも2023年にベルサイユ宮殿を訪れた人の81%を占めた。また、国立博物館(2022年比6%増の800万人)や国有地・記念物(前年比8%増の330万人)を訪れた25歳以下の訪問者数も増加している。 フランスの文化遺産や博物館は多額の公的補助金を受けているが、来場者の54%は10ユーロ(1598円)以上の入場料を支払っており、2019年の44%から増加している。そのうちの半数は11~15ユーロ(1758~2397円)、残りの半数は16ユーロ(2557円)以上を支払っている。しかし、インフレと消費者物価の上昇に対する現在の懸念からか、分野別の優先順位では、国民の54%が映画を挙げており、博物館、展示会、記念碑の鑑賞は36%だった。 2024年は夏季オリンピックにより、ルーブル美術館の入場者数が大幅に減少したほか、他の美術館も閉鎖を余儀なくされ、パリ市内および近郊のいくつかの施設の入場者数も減少している。街に軍隊と警察が多数出動したことで地元住民は街を離れ、アスリートやその家族、友人、有名人の観客が押し寄せたものの、観光客もこの地域を避けたため、7月の外国人訪問者数は15%減少した。来年の調査結果にも注目だ。
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