「遺伝子組換えでない」の表示を最近見なくなったな、と思っている人に伝えたい事実、表示義務がない食品も
輸入運搬や工場で「うっかり組換え大豆が1粒入ってしまった」というようなことも許されなくなり、「遺伝子組換えでない」という表示の製品はめっきり減りました。 ■油、液糖、醤油には表示義務はない 一方、油や液糖、醤油などは、原材料として遺伝子組換え品種を用いていても表示義務はありません。油や液糖には、組換えされた遺伝子や、その遺伝子からできたたんぱく質などが含まれておらず、検査で遺伝子組換え原材料を用いたかどうか判断できません。醤油は、発酵工程で遺伝子やたんぱく質の分解が進んでおり、これも検査では判別できません。こうしたことから、表示義務は課されていないのです。
日本の食品メーカーは、「遺伝子組換えは消費者に好まれていない」と理解しています。そのため、用いた場合に「遺伝子組換え」と表示しなければならない豆腐や納豆などの食品については気をつけ、原材料として遺伝子組換え品種を用いないようにしています。一方、油や液糖、醤油など表示が必要でない食品製造には用いています。 また、とうもろこしや大豆、なたねなどの絞り滓は、飼料として動物に大量に与えられていますが、その動物の肉なども遺伝子組換え品種で育てられていることを表示する必要がありません。そのため、日本人は知らない間に2000万トンを超える遺伝子組換え作物を輸入し、直接的に、あるいは肉や卵などとして間接的に食べている、ということになります。
遺伝子組換え食品が人々に食べられるようになってもうすぐ30年になり世界で利用されていますが、健康影響をもたらす事故は1件も起きていません。厳しい審査が効果を発揮しているのでしょう。神経質になる必要はないだろうと考えます。
松永 和紀 :科学ジャーナリスト