「遺伝子組換えでない」の表示を最近見なくなったな、と思っている人に伝えたい事実、表示義務がない食品も
そのうえ豚のインシュリンはヒトのインシュリンと少し異なるため、副作用もありました。しかし、1970年代にヒトのインシュリンが遺伝子組換えされた微生物で生産されるようになって、大勢の糖尿病患者が安く高品質のインシュリンを得て救われました。 ■なぜ微生物の遺伝子を植物に? 微生物の遺伝子を植物に組み込むなどと聞くと、ギョッとする人もいるかもしれません。これが可能なのは、遺伝子を構成しているDNAが、どの生物でも共通だからです。遺伝子の違いは、DNAに含まれる塩基の配列により生じます。
ただし、ヒトとほかの生物が共通に持っている遺伝子も多数あります。生物の進化の歴史の中でも、ある生物の遺伝子が別種の遺伝子に入る、というような自然の遺伝子組換えが多数起きてきたようです。 こうした研究も踏まえ、遺伝子を別の種の生物に導入する遺伝子組換えが行われています。どんな遺伝子がどこに入って何を作るか、ケースによってまったく異なります。場合によっては毒性物質やアレルゲンが生産される可能性もあるので、日本では、内閣府食品安全委員会や農林水産省、消費者庁などが審査し、組換えされていない品種と同等に安全と評価したものだけを認める仕組みとなっています。
遺伝子組換え食品を、そのまま販売したり加工食品の原材料として製造販売する際に日本では、原則として「遺伝子組換え」と表示して販売することが義務付けられています。対象は大豆やとうもろこし、なたね、パパイヤなど9農産物と、それを原材料とした33加工食品群(豆腐や納豆、豆乳、コーンスナック菓子など)です。 昔は、「遺伝子組換えでない」という表示が豆腐や納豆などでよく見られました。しかし、現在は表示の規制が厳しくなり、遺伝子組換え品種と分別して運び加工するなどしたうえで、検査などにより「遺伝子組換えの混入がない」と確認されたものでないと「遺伝子組換えではない」という表示はできません。