「準硬」って知ってる?甲子園常連校の監督も勧める「大学準硬式野球」という選択肢 競技性追求しつつ、勉強に励みキャンパスライフも満喫
「準硬」という言葉をご存じだろうか。聞き慣れないかもしれないが、準硬式野球の略で、プロ野球の「硬式」、少年野球で主流の「軟式」と並ぶ野球競技の一つだ。外側は軟式、中は硬式に近い特殊なボールを使い、大学を中心に浸透している。多くのプロ野球選手を輩出し、競技としてのレベルも高いが、魅力はそれだけではない。選手の自主性を重んじる「学生主体」の文化があり、勉強や私生活の時間も確保しやすい。「大学では野球だけでなく、人生の選択肢を増やして」。甲子園出場常連のあの強豪校監督も、教え子に準硬式という選択肢を提案している。(共同通信=内藤界) ▽半分硬式、半分軟式 準硬式のボールは、表面を軟式のように天然ゴムで覆い、内部は硬式同様、コルクや樹脂を混ぜ固くした芯が入る。「硬式に近い感覚の野球を身近に楽しめるように」と、兵庫県明石市の「内外ゴム」が1949年に開発。現在、全日本大学準硬式野球連盟に約270校、約9400人が加盟する。中が空洞の軟式球に比べ打球が飛ぶため、プレースタイルは硬式に近い。大学では木製バットを使う硬式に対し、金属バットが主流だ。大阪府では、一部の中学校が部活動に採用。プロ野球で活躍した巨人ファーム総監督の桑田真澄さんも、中学時代に大阪で準硬式を経験している。
▽野球も勉強も 「野球も頑張れて、勉強にも時間を使える。『準硬』だからやり遂げられました」。同志社大準硬式野球部で副主将を務めた菅野豪琉さん(23)はこの春、誰もが知る大手企業に入社し、営業職として新生活を始めた。高校野球の強豪・花巻東高硬式野球部(岩手県花巻市)時代は春夏ともに甲子園に出場。大学でも1年時から外野手として活躍しながら勉強にも励み、英語検定試験「TOEIC」の点数は800点台を取るまでに成長した。 文武両道を可能にしたのは、準硬式野球独特の文化だ。同じ大学野球でも、硬式は、プロや社会人野球を目指す選手が多く所属し、寮住まいやアルバイトの禁止などを求められることもある。ただ部活動漬けの大学生活を送っても、部員100人以上の大所帯が少なくない環境で、表舞台に立てる選手は一握りだ。 一方、準硬式は私生活の制限が少ない大学が多い。チーム規模も小さいため、自然と出場機会にも恵まれやすく、運営や采配など学生の自主性を重視する傾向がある。高校までの指導者が主体となる「やらされる野球」から、学生主体の「考える野球」に切り替わることで、部員の責任も重くなる分、やりがいも大きくなる。