「準硬」って知ってる?甲子園常連校の監督も勧める「大学準硬式野球」という選択肢 競技性追求しつつ、勉強に励みキャンパスライフも満喫
軟式にも似た文化があるが、ボールが空洞で打球が伸びず、硬式になじんだ選手はプレースタイルが変わるとして敬遠することが多いという。開発した内外ゴムの「硬式に近い感覚の野球を」との思いは、多くの球児の心をつかんできた。 ▽人生の選択肢を 高校時代の菅野さんを指導し、同志社大準硬式野球部に推薦した、花巻東高硬式野球部の佐々木洋監督(47)に話を聞いた。 同高は春夏計14回、甲子園に出場し、米大リーグの大谷翔平選手らプロも輩出した言わずと知れた名門。それでも、佐々木さんは教え子たちに対し「野球だけしていても何もならない。時間に余裕がある大学で人生の選択肢を増やし、将来の幸せをつかんでほしい」と伝えているという。 原点にあるのは、自身の挫折だ。「野球で失敗して良かったんですよ」。佐々木さんはそう過去を振り返る。 岩手県立黒尻沢北高(北上市)を卒業後、国士舘大で硬式野球部に入部。当初はプロや社会人チームを目指したが、部内の競争は激しかった。野球で就職できるほどの成績は残せず、進路を指導者に変更。大学でつかんだ一番の「人生の選択肢」は「教員免許」だった。
この経験から、教え子には「大学でアイテムを増やせ」と伝える。大学の4年間を全て野球に捧げるのではなく、残りの人生の選択肢を増やす機会にしてほしいからだ。菅野さんの場合、プロには届かないが実力は十分で、積極的に勉強に取り組む姿も見てきた。野球をしながら将来への準備も十分できると、菅野さんをはじめ、多くの選手に準硬式を勧めてきたという。 ▽医師の卵、快進撃 3月上旬の山形市。きれいに雪が溶けたグラウンドで、山形大の医学部準硬式野球部員が汗を流した。「やっぱり外だと気持ちが入ります」。体育館で調整する冬が終わり、主将で4年生の尾形季洋さん(22)は笑う。 学年を越えて和気あいあいとした様子だが、昨年の東北地区秋季リーグ戦では創部初の優勝。春季リーグは2位で惜しくも優勝を逃したが、念願の全国大会の切符をつかんだ。「全国大会は目標にさえしていなかった舞台。すぐに実感は湧かなかったです」と尾形さん。9月の大会に向けて、汗を流す日々を送る。