「準硬」って知ってる?甲子園常連校の監督も勧める「大学準硬式野球」という選択肢 競技性追求しつつ、勉強に励みキャンパスライフも満喫
6年生までの選手は全員が医学部医学科で、医師を目指す。これまで東日本の医学部生だけが参加する大会を主戦場としてきただけに、私立の強豪校を含め計6校が争うリーグ戦での優勝は快挙だ。元々自信があった打線を軸に、課題の守備を改善。バントなど小技も磨き、「頭を使った野球」(尾形さん)で勝ち抜いた。 新潟県の公立高で硬式野球に打ち込んだ2年生の富沢勇斗さん(22)は、3年間の浪人を経て入学した。他の学部では目立つ「3浪」でも「医学部は現役入学の方が珍しい。年齢ではなく学年で接してくれるので、気も遣わなくていい」と話す。中学生でやめた野球を再開する選手や、全くの初心者も所属。実力や体力などの不安で、硬式でプレーする自信がない選手たちの受け皿になっている。 準硬式野球部がある大学医学部は多い。日頃の授業や試験に加え、4年時からは実習や国家試験の準備が本格化し、白衣をまとう時間も増える。硬式は難しくても、野球をやりたい学生の受け皿となっている。関西や九州には医学部や歯学部、薬学部だけでつくる「医歯薬リーグ」もある。
山形大では、平日の練習は夕方以降が中心で、日中は勉強に集中できる。全員が同じ学部なので、練習時間や試合日程を組みやすい。練習の合間は、「授業や試験の話題で持ちきり」(尾形さん)だという。 ▽「野球好き」にこそ 野球を含めた大学スポーツは、学業と部活動の両立が課題。「大学スポーツ協会(UNIVAS)」の担当者は「大学は学ぶための場所。プロになれるのは全体の数%で、学生は文武両道を目指してほしい」と話す。 準硬式の普及は知名度の向上が鍵になりそうだ。全日本大学準硬式野球連盟によると、大学の競技人口は長年9千~1万人と横ばいで、硬式の3分の1程度。連盟の長島幸雄さん(69)は、準硬式は入部テストを課す大学は少数で、希望者はほぼ入部できると説明。「『野球が好き』という純粋な気持ちの子が、野球に取り組める」と、高校での普及活動などに取り組んでいる。