プロっぽいけどアマチュアですよ 企業ロゴ入りのユニフォームがじわじわ広がる、納得の理由
2020年に始めたものの
ただ、サービスを始めるにあたって、社内からは懸念の声もあった。「ユニフォームはECサイトで売れない」という指摘である。考えてみると、ユニフォームを購入するにあたって、細かなやりとりは欠かせない。色はどうするのか、デザインはどうするのか、ロゴのフォントはどうするのかなど。お客と店員が直接やりとりするのではなく、ネット上だけで完結できるのかといった不安があったのだ。 では、どのようにしてその不安を解消したのか。参考にしたのは、ゲームである。サッカーゲームの場合、チーム名を決めて、ユニフォームのデザインを選んで、選手を誰にするのかを考えて。こうした一連の作業が必要になるわけだが、ゲーム感覚でユニフォームを選べるようにすれば、購入のハードルが下がるのではないか。こうした仮説を立て、ECサイトのデザインなどを決めていった。 このほかにもさまざまなことを調整して「準備」が整ったわけだが、コロナ禍でのスタートだったので事業を進めるのは大変だったという。人との接触が多いスポーツは制限されていたので、興味を示してくれるお客が少なかったのだ。 また、スポンサー集めにも困難が待っていた。これまでになかった仕組みなので、スポンサーにどういったメリットがあるのか、きちんと説明しなければいけない。「よし、分かった。広告費として考えよう」と前向きな言葉をもらえても、次に待っていたのは“逆風”である。 商談がうまく進んでいても、コロナの影響を受けて、業績が悪化した企業も。経費を圧縮しなければいけないといった事態に陥り、残念ながら話がまとまらないケースもあったそうだ。
大きな課題が2つ
それでも計画通りに、事業を進めなければいけない。なんとか始めたものの、大きな課題が2つ待っていた。1つは、どういった人が使っているかである。チームの世代カテゴリーを見ると、「社会人」が最も多く53.3%。以下「小学生」が19.0%、「大学生」が14.0%と続く。しかし、ボリュームゾーンである「高校生」は6.3%、「中学生」はわずか4.0%なのだ。 なぜ、中学生と高校生の利用が少ないのか。日本中学校体育連盟(中体連)と全国高等学校体育連盟(高体連)主催の大会では、広告入りのユニフォームは基本NGだからである。もちろん、放課後の練習や非公式の試合などでは着れるものの、中・高体連主催の大会では着用できないので、チームとしても「スポンサー入りはちょっと……」と気分がのらない事情があるようだ。 しかし、会社として何もしないわけにはいかないので、ジャージやパーカーといったチームウェアを展開することに。企業ロゴ入りのユニフォームを買えないとなれば、ジャージはどうか。「あ、それはいいかも。できるだけ安いほうがいいからね」ということで、アウトフィッターでジャージを購入するケースが増えているようだ。 もう1つの課題は、売り上げがサッカーのユニフォームに偏っていること。イオン・シグナ社はバレーボールとバスケットボールも扱っているが、この2つの人気は「まだまだ」といったところ。その要因として「サッカーとは異なり、バレーボールやバスケットボールでは、ユニフォームに企業ロゴを入れる歴史が浅い。そのため、アマチュア選手には馴染みが薄いのかもしれません」(担当者)