珍しい名字「返脚」さん。そのルーツを遡ると、意外な歴史がありました。
珍しい名字:返脚(へんきゃく)
「返脚」という名字が愛媛県松山市にあります。「返却」ではなく「脚」という漢字を使うのです。 「返脚」家はかつて木地師であり、もともとは「小椋」という名字でした。木地師とは、木地のままの器類を作ることを職業とする人のことです。 古い時代には、良質な木を求めて自由に山に入って木を切り出し、轆轤(ろくろ)で椀や盆、杓子などを作っていました。そして、木がなくなると次の山に移動するという生活を営んでいました。 そして、この木地師達は文徳天皇第一皇子の惟喬親王を祖と仰いでいました。というのも、轆轤は惟喬親王が発明し、その家臣に伝えたものであるという伝説があるのです。そして、その家臣が近江国愛智郡小椋郷(現在の滋賀県東近江市)をルーツとする小椋氏で、以後「小椋」は木地師を表す名字となりました。 松山にいた返脚家の祖は明治維新後に木地師をやめ、系譜を小椋宗家に返納したといいます。その際、新たに小椋宗家から賜った名字が「返却したこと」に因む「返脚」だったと伝えられています。
森岡浩/Hiroshi Morioka
姓氏研究家 1961年高知県生まれ。早稲田大学政経学部在学中から独学で名字の研究をはじめる。長い歴史をもち、不明なことも多い名字の世界を、歴史学や地名学、民俗学などさまざまな分野からの多角的なアプローチで追求し、文献だけにとらわれない研究を続けている。著書は「全国名字大辞典」など多数。
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