1ドル=160円近辺でのドル資産売却は「ナイストレード」、なぜ岸田首相はせっかくの「空前の為替差益」を使わないのか
前回のコラム「5月以降の米国株は意外に底堅い」と見るこれだけの理由」(4月30日配信)では、夏場にかけてはアメリカのFRB(連邦準備制度理事会)の利下げを後押しする経済指標が相次ぐことを予想した。それによって、インフレ制御に腐心しているFRBに対する株式市場の信認は保たれ、同国の金利が一段と上昇する可能性は低いとの考えを述べた。 ■「再利上げ」に距離をとったパウエルFRB議長 同記事の配信直後に開催されたFOMC(連邦公開市場委員会、4月30日~5月1日)では、予想通り政策金利は据え置かれた。またジェローム・パウエルFRB議長の会見では、従来とほぼ変わらない考えが示された。
年初からインフレ上振れが続く中で、「議長を含めたFOMCメンバーの利下げ姿勢が揺らいでいる」との疑念が金融市場では強まっていたが、パウエル議長は「再利上げはないだろう」などと述べて追加利上げについて距離をとった姿勢を示したことが、「ハト派的」と市場で解釈された。 パウエル議長の今の考えを推し量ると、「今後の判断はデータ次第(可能性は低いが利上げもありうる)で、利下げ開始の時期も今後検討」、というところだろう。結局、データ次第で今後の判断は変わるのだから、決して「従来よりもハトになった」というわけではない。
それでも2024年になってアメリカ経済が年率3%以上の高インフレが進行する中で、市場は「次の選択は追加利上げではないか」と身構えていたが、パウエル議長らは、インフレ指標の動きについて、市場に比べるともう少し冷静でいるようだ。 実際には前回のコラムでも指摘したように、2024年1~3月にみられた「家賃以外のサービス価格」の上振れが、なぜ起きたかの判断が重要だ。1~3月のアメリカ経済は個人消費が年率+2%超となるなど、引き続き堅調だが、昨年後半と比べれば落ち着きつつある。
賃金上昇に起因するサービス価格上昇圧力が高まっていないならば、高インフレは続かないので、4月以降は再び2023年後半同様にインフレ率は落ち着くと筆者は予想している。 ■企業の人手確保の意欲低下がハッキリしてきた 4月分のCPI(消費者物価指数)の発表は5月15日にあることから、それまで最新のインフレ動向は判明しないが、5月になってからは筆者の想定通り、アメリカ経済が減速していることを示す重要指標が相次いで発表されている。