20周年を迎えた『オシャレ魔女 ラブ and ベリー(ラブベリ)』が教えてくれた、TPOでオシャレを楽しむということ
「そこまではさすがに考えていませんでした。 まず一歩として、女の子をゲームセンターに呼ぶことが重要だったので、そこからの展開というのは予想していませんでした」(近野さん) また、ラブベリが登場する以前、女の子たちのゲームセンター利用といえば、主にプリクラ撮影が中心だった。しかし本作の登場により、女の子とゲームセンターの距離は大きく縮まることとなる。
この成功の背景には、設置場所への綿密な配慮があった。「小さな子どもがゲームセンターに入ることへの親御さんの不安を考慮し、ショッピングセンターのゲームコーナーや、プリクラコーナーの近くなど、入りやすい場所に設置することを心がけました」と近野さんは語る。 多くの人々が本作を家族との温かい思い出とともに記憶しているのは、こうした細やかな配慮があってこそだったのだろう。
服づくりと同じ工程でデザインされた、ラブベリのファッション
ラブベリの核となる「オシャレまほうカード」は、細部まで丁寧に描かれた美しいデザインで、手にした瞬間から心がときめくような魅力があった。 ジュニア世代に人気のアイテムはもちろん、ギャル系など少し背伸びしたデザインまで、幅広いファッションテイストを網羅していたのも特徴だ。
「ティーンズ誌から大人向けのファッション誌まで幅広く研究し、次の流行を予測しながらデザインを作り上げていきました。来年のトレンドカラーやデザインを見据えながら、カードのデザインに落とし込んでいったのです」と近野さんは当時を振り返る。 さらに、ヘアスタイルも種類豊富。流行のヘアスタイルから80年代アイドル風、はたまたアフロヘアまで多種多様に揃えている。
「当初はヘアカタログをベースにしていましたが、後半はデザイナーたちのアイディアスケッチを持ち寄って決めていきました。たとえばアフロヘアは、70年代ディスコを象徴するスタイルとして、ディスコステージの追加に合わせて実装されました」と近野さんは語る。
2004年の誕生以降、「オシャレまほうカード」はシーズンごとにコレクションを展開しており、そのデザインは年々増加していった。「制作には最大10人ほどのドレスデザイナー、CGデザイナー、カードデザイナーが関わり、週2回のミーティングを重ねながらデザインを決定していきました。 1コレクションあたり約80種類のカードを展開し、そのうち20%ほどを新デザインにすることを目標としていました」(近野さん) 現在開催中の『オシャレ魔女 ラブ and ベリー展~オシャレまほうミュージアム~』 では、素材からディテールまで緻密に描かれた当時の設定資料を見ることができる。 「CGデザイナーが想像だけで作業すると、ドレスデザイナーの意図とは異なる仕上がりになってしまいます。そのため、実際の服作りと同じように、素材感やパターンを詳細に記した設定資料を用意していました」と近野さんは説明する。 誕生から20年が経過した今でも、本作のビジュアルは古さを感じさせない。映像を通して表現されるファッションは、素材感や細かなディテールまで丁寧に表現されており、当時としては驚くべきクオリティを誇っていた。