「首都直下地震の被害軽減に耐震補強工事を急ぐべき」元雑誌編集長が提言
ちなみに、北九州市が管理する橋や高架橋って、どれくらいあると思いますか? これが約2000もあって、既に約半数は建設から50年を超え、10年後には8割近くに達します。福岡市の管理する橋も同じくおよそ2000あって、北九州市ほどではありませんが、10年後にはおよそ4割が50年を超えます。両市とも緊急度に応じて補修を進めていますが、老朽化との追いかけっこになっている面も否めません。 ■諸外国に比べ遅れをとる電柱の地中化 話を首都直下型地震の対策に戻すと、重要物流道路ですら、まだ橋や高架の2割で耐震化が終わっていないというのは、結構深刻な事態だと私は思います。そして道路についてはもう一つ、意外な耐震対策がありました。言われてみれば「確かに」と思うのですが、それは「電柱の地中化」です。 地震で道路が通れなくなる理由の一つに電柱の倒壊があり、これは地震だけでなく、むしろ大型化する台風被害で顕著です。例えば、5年前の9月、千葉に上陸した台風15号ではおよそ2000本の鉄塔や電柱が倒れ、最大時90万戸以上が停電し、全面復旧まで2週間かかりました。このため既に、重要物流道路では電柱の新設は原則禁じられていますが、既存の電柱の地中化は、費用の高さもあってなかなか進んでいません。 ちなみに日本には今、いったいどのくらいの電柱があるかというと、これがなんと、およそ3600万本です。このうち地中化された割合は、というと、残念ながらまだわずか0.3%。東京都が最も高いんですが、それでも23区でおよそ8%です。福岡市はおよそ4%、北九州市は2%ほどで、世界の主要都市では、ロンドンやパリ、香港やシンガポールは100%です。 国別では北欧やドイツ、イギリスなどで8割を超えています。地震や台風など自然災害が多い日本こそ地中化を進めるべきだ、という声は以前からあるんですが、1kmあたり1億から5億という費用が壁になってなかなか進みません。ただ、首都直下地震対策で言えば、少なくとも電柱倒壊による災害リスクが高い市街地の緊急輸送路沿いでは、2040年までに65%は達成すべきだと、今回の報告書は提言しています。