「首都直下地震の被害軽減に耐震補強工事を急ぐべき」元雑誌編集長が提言
■老朽化が進む高度経済成長期の橋梁 では、具体的にどんな対策を講じるのか、ですが、施設別に分けてお話しします。 まずは道路です。大地震が起きると道路は寸断され、避難や救助活動に大きな支障を及ぼすだけでなく、復旧作業も滞りますし、物流が止まることで経済活動にも大きな影響を及ぼします。このため2018年に道路法などが改正されて、国土交通大臣が物流上重要な道路輸送網を「重要物流道路」として指定し、災害発生から概ね1日で緊急車両が通行でき、1週間で物流を再開させられるような道路幅の確保や、構造物の強化などを進めています。首都直下への備えでもこれが最も大きく、15兆円を見込みます。 「道路の構造物強化」をさらに細かく見ると、例えば「橋」=橋梁の耐震補強があります。これは川にかかる橋だけでなく、道路自体が高架になっているところや、立体交差の高架部分なども含みます。この耐震化率、重要物流路に指定されている道路でもまだ8割ほどで、これを2040年までに100%にするとしています。 少し話がそれますが、この「橋の老朽化」は世界的な問題で、記憶に新しい事故は今年3月、アメリカで起きた橋の崩落事故。制御不能になった巨大な貨物船が、港を横断する高速道路の橋脚に衝突して、橋全体が崩落しました。橋は1977年の建設ですが、船の衝突による崩落ですから、老朽化は直接の原因ではありません。 ただ、アメリカでは1980年に今回と同じく、大型貨物船が橋脚にぶつかって崩落した事故があり、その後建設された橋は橋脚を守る設計になったということで、その意味では設計が古かったのも事実です。また、アメリカではおととし、1日1万数千台の車が走る、建設後50年以上経った橋が崩落する事故もあり、アメリカ政府は5年間でおよそ15兆円をかけて橋や道路の改修を進めています。 これは決して他人事ではありません。日本には大小合わせておよそ73万カ所の橋梁がありますが、昭和30~40年代の高度経済成長期に作られたものが多く、2030年にはなんと全体の6割が建設から50年を超える見込みです。