<ルックバック>haruka nakamuraインタビュー 音楽に込めた思い 最初のインスピレーションを大切に
「チェンソーマン」などで知られる藤本タツキさんのマンガが原作の劇場版アニメ「ルックバック」(押山清高監督)のドルビーシネマ、ドルビーアトモス版が9月13日から上映されている。ドルビーシネマ、ドルビーアトモスによる立体的なサウンドによって、作品への没入感がさらに増した。美しく繊細な音楽を手掛けたのが、haruka nakamuraさんだ。原作者の藤本さんが、nakamuraさんの音楽を聴きながら同作を描いていたことをきっかけに、アニメの音楽を依頼されたという。nakamuraさんに同作への思い、音楽制作の裏側を聞いた。 【写真特集】「ルックバック」すごすぎる映像 ビジュアル一挙公開 haruka nakamuraも
◇映像を見ながら即興的にピアノを弾いた
ーー原作を読んだ印象は? クリエーターとして共感するところもあった?
創作に向かう時間、机にひたすら向かう主人公たちのように、押山清高監督も、原作の藤本タツキ先生も、そして僕も、創作者の背中は多くの孤独の時間と向き合っていると思います。人生においても別れや喪失、さまざまな暗闇のトンネルを経て、それでもわずかな光を探し、また希望へと進んでいく。押山監督も藤本先生も僕も東北出身、北国育ちなこともあり、永い冬の孤独な時間を創作に向き合ってきた、深く共通する感覚は多かったように思います。映画の公開を終えて3人で話した時も、この「北国の冬の時間」の話になりました。それは例えば雪が降ると音が消えていく沈黙、静寂の時間だったり。まるで永遠に冬が続くかのように思えてしまう、遠い春を待つ情景だったり。
ーー押山監督から要望は?
押山監督からは、「せりふや言葉で説明しないシーンが多い作品なので、音楽で感情や情景を表現してほしい」というリクエストをいただきました。僕も原作に感動した読者の一人として、できるだけ純度の高い、最初にマンガを読んだ時にアタマの中で鳴っていた音楽、また押山監督が創り出す映像を見た時のインスピレーションを大切に作りました。監督のリクエストの中で特に興味深かったのは藤野が描いた4コママンガのシーン。「小学校の音楽室にある楽器だけで作ってみてください」と。小学生が描いた4コママンガなので、小学生が思いつきそうな慣れ親しんだ楽器で、と。懐かしい記憶をたどり、ピアニカ、リコーダーやアコーディオン、木琴などの音色で作りました。わりとそのような楽器を普段の音楽でも元々使用していたので、楽しく作りました。それから、冒頭のイントロダクションは原作にはない映画ならではのシーンだったので、押山監督のイメージする空から藤野の背中まで降りてくる、流れるような映像を説明していただき、共有して制作しました。