3月実質賃金2.5%減、24カ月連続マイナス-所定内給与は増加基調維持
(ブルームバーグ): 物価の変動を反映させた3月の実質賃金は24カ月連続で前年を下回った。賃金の基調を把握する上で注目される所定内給与は増加基調を維持したものの、賞与など特別給与の減少が名目賃金を押し下げ、物価の伸びを下回る状態が続いている。
厚生労働省が9日発表した毎月勤労統計調査(速報)によると、実質賃金は前年同月比2.5%減。減少幅は前月から拡大し、市場予想(1.4%減)よりも大きかった。名目賃金に相当する1人当たりの現金給与総額は0.6%増と27カ月連続増加したが、前月からは鈍化。特別給与が9.4%減と全体を押し下げた。一方、基本給に当たる所定内給与は1.7%増と9カ月ぶりの高い伸びだった2月の水準を維持した。
エコノミストが賃金のトレンドを見る上で注目するサンプル替えの影響を受けない共通事業所ベースでは、名目賃金と所定内給与がともに2.2%増と、前月から伸びが拡大した。
日本銀行は3月に、賃金・物価の好循環を確認したとして17年ぶりの利上げに踏み切ったが、市場が注目する追加利上げの時期やペースを占う上で賃金動向は引き続き重要な鍵となる。足元の円安進行で輸入物価上昇への懸念が再び浮上する中、今年の春闘での5%を超える賃上げによって実質賃金に4月以降、どの程度改善が見られるが今後の焦点となりそうだ。
日銀の植田和男総裁は8日の衆院財務金融委員会で、為替動向次第では金融政策による対応が必要になるとの見解を示し、円安へのけん制姿勢を強めた。鈴木俊一財務相も、円安による物価への負の影響に対する強い懸念を表明した。
連合が同日発表した今春闘の第5回回答集計結果(2日時点)によると、平均賃上げ率は5.17%と最終集計との比較では1991年(5.66%)以来の高水準を維持。中小企業は4.66%と92年以来の高い伸びとなっている。
実質賃金の算出に用いる消費者物価指数(持ち家の帰属家賃を除く総合)は3月に前年同月比3.1%上昇。2カ月連続で3%台の伸びを維持した。