【酒井順子さん×麻布競馬場さん『消費される階級』刊行記念特別対談 】〝みんな平等、みんな違っていい″は受け入れられているかー無数で多様な格差の取り扱い方
圧倒的にモテているのは「エンジニア」
麻布 結婚に関しては、新しい「階級」も生まれています。かつて合コンで一番モテるのは商社・外銀・外コン(外資系コンサルタント)でしたが、それらを抑えて圧倒的にモテているのは「エンジニア」なんです。それも「IBMから転職してGoogleにいます」みたいなGAFA系エンジニアが最強で。めちゃめちゃ稼いでいますからね。 酒井 やっぱりお金と美女がくっつくという定理は不変なわけですね。 麻布 見た目は真面目で丸い眼鏡をかけて、酒井さんがおっしゃるところの「漫研」風のいでたちなのですが、隣に連れてくるパートナーはばきばきの美人だったりして……あ、これもルッキズムで、いけませんよね(笑)。「体育会系エリートの上に立つインターネットギーク」という階級変動が起きています。 酒井 稼ぐ女子がモテる、という現象にはならないんですか(笑)。 麻布 『消費される階級』の一番目にある「男高女低神話のゆらぎ」の問題ですね。まさに書かれていたとおりのことが、僕の周りでも起きていて、「もともとは男の自分のほうが稼いでいたけれど、転職を機に妻の収入のほうが高くなった途端、家事分担の見直しを迫られて……なんかモヤモヤする」みたいな。妻からしたらシンプルに「管理職になって忙しくなったからよろしく」という合理性の問題なのに、男は自分の価値が下がったように思えて受け入れられない。 酒井 でも、さすがに昔と比べると意識は変わってきているんじゃないですか。 麻布 はい、高収入女性が冗談半分に「ヒモを飼いたい」と言っているのを何度か聞きましたね。 酒井 そうなりますよね。 麻布 「お金は私が稼いでくるから、感じよく家で待ってくれる人がいてほしい」って。猫を飼うみたいな感覚で結婚相手を探す女性が増えている気がします。 酒井 言葉もしゃべれる猫ですね(笑)。 麻布 そうです。掃除も買い物だってできます(笑)。