夏合宿中から大一番へ準備、4年生QBは「タイヤ」と呼ばれる練習も 関西学院大学が61度目の関西学生リーグ優勝
OLの粘りとRBの機転が生んだロングゲイン
ハーフタイムに入るときのハドルで、関大キャプテンの須田は「いける。ええ顔してやろう」と呼びかけた。関学の星野弟はマネージャーから、兄が腕に着けていた三つのシリコンバンドと、「あとは任せたぞ」の伝言を受け取った。 後半は関大オフェンスから。いきなり反則で罰退し、攻撃権を更新できずにパント。副キャプテン金森陽太朗(4年、南山)のナイスパントで関学を自陣3ydに追いやった。関学は2度続けて伊丹に託すが進まない。第3ダウン10ydでも伊丹が中央付近を突いて、団子状態になった。しかし関学のエースランナーは、これでは終わらない。左に壁ができているのを見逃さなかった。バウンスバックして駆け出すと、広大なスペースが広がっていた。27ydのゲインで攻撃権更新だ。「(左タックルの)近藤が押し込んでるのが見えたんで、思いきって外を走ったろうと思いました」。伊丹は右手を大きく振り上げ、「ファーストダウン」のジェスチャーで喜びを表した。 伊丹がもとの位置でタックルされていればパントとなり、関大オフェンスに絶好のフィールドポジションを渡していた可能性がある。OLが入学以来徹底してきた「フィニッシュ」とエースRBの機転が関学オフェンスを生き返らせた。このシリーズは星野弟からWR五十嵐太郎(3年、関西学院)への27ydTDパスで結実。9プレーで97ydを攻めきり、24-6と関大を突き放した。 五十嵐へのTDパスにも関学のしたたかさが詰まっていた。直前の3プレーは狭い左サイドに人数を増やしてのランを続けた。ひとり右に開いたレシーバーはプレーサイドにブロックにいく動きを繰り返した。そして、五十嵐がその動きから反転して右へルートを取ると、DBはついてこられない。星野弟が奥に投げすぎて頭越しの極めて難しいボールになったが、冷静さが信条の五十嵐は両腕を柔らかく使ってキャッチした。 関大は次のオフェンスでも攻めきれず、またも金森がナイスパント。今度は敵陣2ydに押し込めた。そして最初のランプレーに対し、関大の副キャプテンであるDL森本祥希(4年、関大一)がエンドゾーンでタックルしてセイフティー。この試合でようやくけがから復帰したディフェンスリーダーの魂のタックルに、関大サイドが沸き立った。24-8。このあと関学が1TDを加え、関大がこの日初のTDを決めたが遅すぎた。31-15で関学が勝った。