視聴率低迷「紅白歌合戦」の存在意義は 儀礼として定着、継承を 大阪公立大の増田聡教授 明解!公大ゼミ
大みそかといえばNHK紅白歌合戦-なんて表現に迷いを抱いている。ビデオリサーチの調査によれば、平均世帯視聴率は下落が止まらず、昨年は関西地区で第1部が27・5%、第2部は32・5%と過去最低を記録した。受信料で成り立つ歌謡祭の未来を、大阪公立大大学院文学研究科の増田聡教授と一緒に考えてみた。 【グラフでみる】NHK紅白歌合戦の平均視聴率の推移 ――紅白の視聴率低迷はいつからだと考えますか 「1980年代半ば(昭和60年前後)でしょうか。数字がポーンと落ち、以降は雪崩が起きたようになっていく。これはニューミュージックが歌謡曲産業を駆逐していく過程と重なります」 --えーと。そもそも歌謡曲とは何でしょうか 「戦前、日本でレコード産業が形成され始めた頃に生まれたジャンルです。音楽会社専属の作曲家や作詞家が作った曲を歌手が歌う。戦後になってラジオやテレビと結びつき、『歌謡曲』として発展しました。昭和26年に始まった紅白とは相思相愛というか、相乗効果があったわけです」 ――対してニューミュージックとは 「1960年代にザ・ビートルズが世界中でヒットしました。それを模して日本ではグループサウンズが生まれますが、これらは〝先生〟が作った曲を歌手が歌う、という歌謡曲産業の中で生まれたものです。ビートルズは曲を自作しました。その影響から、歌謡曲産業の外でも音楽が作られるようになっていく。フォークソングがヒットし、70年代には中島みゆき、吉田拓郎のような人が現れ、ニューミュージックと称されていきます」 ――音楽のジャンルって産業構造の違いなんですか 「曲をどういう目的で作り、どういうチャンネルで配給するかといった点はコアになります。最近は藤井風(かぜ)とか米津玄師(けんし)とか、旧来の音楽シーンにはなかったところからも音楽が生まれていますよね。すると既存の音楽産業も、外にある才能をピックアップする形を取るようになってきた。YOASOBIがそうです」 ――藤井風も米津玄師もYOASOBIも紅白に出ました。紅白は音楽シーンを反映しているのに視聴率は上がらない