視聴率低迷「紅白歌合戦」の存在意義は 儀礼として定着、継承を 大阪公立大の増田聡教授 明解!公大ゼミ
「シンプルに大みそかの過ごし方の多様化があるのでは」
――見たい人、聴きたい曲が集まれば、国民はこぞって見るに違いない!
「昨年の紅白には旧ジャニーズ事務所所属のグループが出ませんでしたが、視聴率は前年と比べて微減だったじゃないですか。娯楽の多様化など総合的に考えると、コンテンツが悪いから低迷しているということは必ずしも言えない」
--受信料で作る紅白ですから視聴率は大事
「昔は8割の人が見ていたのが、今は30%前後。最近は朝ドラ(NHK連続テレビ小説)でも15%を超えたら立派みたいなところもある中で、30%が見ていたら数字的には十分なのでは。〝甲子園〟をなくしたら高校野球関係者が夢を失うように、紅白をなくすと路頭に迷う関係者もいると思います。ある種〝儀礼〟として定着しているのでしょう。紅白に歌謡曲や演歌が少ないと寂しいと感じるのも儀礼性の表れです」
--歌詞テロップのフォント(書体)が何か、ということを注視している人たちがいるし、1部と2部の合間のニュースを担当するアナウンサーは誰なのかも一部で注目を浴びています
「儀礼として定着すると視聴者は歌以外のところでも楽しむネタを探すわけです。視聴率を取ろうとするのではなく、これが存在しないと年を越せないから継承する、のだと。NHKにはそこを意識してほしいですね」(聞き手 渡部圭介)
■ますだ・さとし 昭和46年4月生まれ。福岡県出身。専門はポピュラー音楽研究。大みそかは職業柄、NHK紅白歌合戦をぼんやり見ながら、裏番組のテレビ東京系「年忘れにっぽんの歌」と行ったり来たり。紅白が果たす役割は評価しつつも、番組の定番となっている「寸劇」は「寒いからやめてほしい。見ていてつらい」とのこと。