請求額は70億円...!「一人の個人投資家」が大企業相手に”異例の訴訟”を起こした「驚愕の理由」《ユニバ社・株主代表訴訟》
「健全な資本主義は、企業が誠実でなくては成立しない」
第二次訴訟と同時進行していたのが、第三次、本件訴訟だ。 創業者である岡田氏を現経営陣である息子と組んで追い出し、同社社長に就いたと評判だった富士本淳氏に対して興した株主代表訴訟だった。 一審の証人尋問で法廷に現れた富士本氏は体躯の良い初老の男性で、意外にも均整がとれた顔立ちをしていたことに私は驚いた。だが、纏っていた雰囲気からは経済マフィアのような印象を受けたのも事実だ。実際、富士本社長の自宅を訪れた人からは、 「監視カメラだらけで、『○○組の本部』と言われてもおかしくないものものしさだった」と、感想を教えてもらったことがある。 結局、令和4年6月30日、 「原告細羽の請求を棄却する」 東京地方裁判所・林史高裁判長は請求棄却の判決を下した。理由について、勝部弁護士は、次のように分析する。 「ユニバ社が疑わしいことは疑わしいのだけれど、証拠が決定的というわけではないと判断したのでしょう。そういう意味で控訴の余地があると考えました」 一方、細羽自身は複雑な表情でその日のことを振り返る。 「やっぱり勝てないのかなと悔しかった。何が足りないのだろうか。できることは全てやってこの判決だから仕方ないと自分を慰めるしかなかった。『控訴しましょう。まだできることはあるはず』と、勝部弁護士は言ってくれたし、ひょっとしたら裁判官の考えも変わるかもしれないと望みを繋ぐことにしましたが、正直、諦めていた部分もありました」 それでも控訴審の決断をしたのは、細羽の持つ「普通の正義感」だ。 「私は、健全な資本主義は、企業が誠実でなくては成立しないと考えている。ユニバーサルという会社の体質は一貫して私たち株主に対して不誠実だった。私はこの会社の株は200株しか持っていないけれど、株を保有している会社にはよくなってほしいという思いが強い。我々株主の声に耳をすまし、株主と一緒に会社を育てようと考えてくれる経営者が増えれば、日本経済全体の底上げになるはずです」 ひねくれ者にはきれい事に聞こえるかもしれない。事実私もそうだった。だが、細羽は本当に、心の底からそう信じているのだ。 ・・・・・・ 裁判の結末は果たしてどうなったのか? 後編記事『「打つ手なし」から賠償額84億円! ただの個人投資家が起こした「異例の訴訟」…大逆転の一手となった「決定的証拠」《ユニバーサルエンターテインメント社・株主代表訴訟》』につづく……。
横田 由美子(ジャーナリスト)
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