"アメリカに愛される要素しかない男"副大統領候補・J.D.ヴァンスが本当に狙っていること――。
あれはアメリカの保守層が長年にわたって抱えてきた不満や怨念、イライラや危うい差別感情などをグチャグチャに混ぜた一種の"毒のカクテル"みたいなもので、議事堂に乱入したりした熱狂的な"トランプ信者"たちは、そのカクテルで酔っぱらい、大騒ぎしている連中なわけです。 ところが、ヴァンスは頭がいいので、そんなめちゃくちゃなトランピズムを自分の頭の中で整理し、時には平然と嘘も混ぜながら、それをもっともらしい言葉で説明することができる。ヴァンスは演説も非常にうまくて、私が個人的に演説の名手だと思っているビル・クリントン元大統領に匹敵するレベルだと感じます。 もちろん、彼はトランプと違って、軍人としての経験や学業、ビジネスを通じて、アメリカという国家がどのようなシステムで動き、誰が何をコントロールしているのかもきちんと理解している。 その上で、トランプを支持するような人たちにどのような言葉で語りかければ、彼らの存在を政治的な力として使えるのかをきちんと計算することができる。その意味で、ヴァンスを副大統領候補に指名したことはトランプ陣営にとって大きな武器になるし、ヴァンスもトランプを利用して自らの野心を実現しようと考えたのでしょう」 ■すでにその目は2028年に!? 大統領選まで残り3ヵ月余り。民主党側は現職のバイデン大統領に代わり、カマラ・ハリス副大統領が正式な大統領候補に指名される可能性が高いといわれている。 現時点で共和党優勢との見方が強い中、副大統領候補にヴァンスが選ばれたことは、今後の選挙戦やその先のアメリカにどんな影響を与えるのだろうか? 「間違いなく、ヴァンスの存在は民主党にとって手ごわい相手になります。例えば、ヴァンスは自分を貧しく生活に苦しんでいる人たちの声を代表する存在だとアピールしていますが、それって本来は左派やリベラルの主張のはず。 ところが、ヴァンスは『彼らが苦しんでいるのは、環境問題に熱心なインテリのリベラルやウォール街にいる金融業界の連中のせいだ』と主張する。 それをもともと大金持ちのトランプが訴えるのと、苦労人のヴァンスが訴えるのでは説得力が全然違います。 また、民主党の候補がカマラ・ハリスに決まれば、彼らは黒人・アジア系で女性という要素を選挙戦でアピールしてくると思いますが、ヴァンスの夫人のウーシャ・チルクリはインド系の優秀な弁護士で、彼女の存在は『共和党が人種的な多様性に非寛容』という批判に対抗する武器にもなりそうです」