待ち望んだ新薬、しかし日本では未承認…「待っていられない」と独自に輸入する道を選んだ男性の奮闘と願い
ホームページでの募金呼びかけとは別に、クラウドファンティングも始めている。これまで約1300万円の寄付が集まった。。24年に入ってから5回目の投与もできた。しかし6回目以降は? 青木さんは「正直、募金活動をして投与を続けるのには限界がある」と話し、一刻も早く国内で公的保険のもとで投与できるようにしてほしいと訴える。 海外で承認された薬が日本で中々使えないのは、トフェルセンに限った問題ではない。 ▽拡大するドラッグロス 名古屋市立大などの研究チームが23年9月、国際専門誌「ドラッグ・ディスカバリー・トゥデー」に発表した論文によると、米国で実用化した希少疾患の新薬が、日本では臨床試験などの承認申請に向けた開発すらされていない「ドラッグロス」と呼ばれるケースが急増している。 チームは、05~21年に米国で承認された希少疾患薬249製品を分析。その結果、うち120製品が日本未承認で、開発すらされていなかったのが86製品に上った。
米国で承認された希少疾患新薬で日本未承認のものの割合は増え続けており、18~21年では68%に達していた。この間、米国で承認された新薬の半分以上はベンチャー発。外資系ベンチャーのうち、自力で日本での開発をしたのは27%だった。 希少疾患は患者数が少なく、治療薬の開発にはコストがかかる一方で、収益性は低いと考えられている。現在、創薬に積極的なのは、ベンチャーや研究機関だ。ただ、米国のベンチャー発の製品の多くは、開発が最終段階に入ってから日本企業や日本に拠点のある外資系企業と連携し始める傾向にあり、日本での承認が遅れる要因となっている。 かつては企業が承認を申請した後の国の審査が遅いことが問題視されていたが、名古屋市立大の児玉耕太教授は「厚生労働省や医薬品医療機器総合機構(PMDA)の努力もあって、審査においてできることはもうほとんどやっている。実際、00年以降は承認までの期間が短くなった」と指摘する。