伊藤華英と柳原真緒が「アスリートの生理」の課題を語り合う「GPを獲れたのは生理に対処できたからだと絶対に言いきれる」
伊藤華英×柳原真緒 対談インタビュー 前編 さまざまなスポーツにおいて、女性アスリートのなかからは、女性ならではの課題を口にする選手も出てきている。そのひとつが生理への対処法だ。しっかりとした対処ができなかったり、対処法が合わなかったりすることにより、成績を大きく落としていたり、その後の人生に悪影響が出てしまう選手もいるという。 【画像】伊藤華英、柳原真緒 対談ショット&フォトギャラリー そんな生理の課題に悩んでいたのが、ガールズケイリン最高峰のレース「ガールズグランプリ2022」を制した柳原真緒選手だ。そして、この課題を克服するきっかけとなったのが、元競泳選手の伊藤華英さんである。自身も生理の影響で五輪本番に苦い経験をし、現在は、⼥⼦学⽣アスリートの⽣理とそれに伴う体調変化に関する教育・情報不⾜などの課題に取り組む、スポーツを⽌めるな「1252プロジェクト」のリーダーを務めている。その伊藤さんと柳原選手に生理の課題について話をうかがった。 【生理についてはノーストレス】 ――すでにおふたりは面識があるということですが、きっかけはどのようなことでしたか。 柳原 以前から生理について悩みを抱えていて、それをJKA(公益財団法人JKA:競輪・オートレースを統括する中央団体)の方に相談したところ、JKAアドバイザーの伊藤華英さんを紹介していただいたのがきっかけです。 伊藤 「ガールズグランプリ2022」で優勝した年ですから、2022年3月くらいでしたよね。その後もすごく活躍されていて、私としてもうれしいです。私はJKAアドバイザーとして日本競輪選手養成所の候補生たちなどに、さまざまな講義をしているんですが、そのなかには生理の話もありましたので、柳原選手から相談があるとうかがってお話をし、婦人科の先生を紹介しました。そこでお薬を処方していただいたということでした。
――どのような悩みだったのでしょうか。 柳原 自分は気持ちの浮き沈みが結構ありました。生理自体というよりは、生理になるのが嫌だという気持ちです。ここらへんで生理がくるな、このレースにかぶるな、嫌だなという思考ですね。決勝の次の日に生理がくるとわかっても、その前日は体が重くなって、サドルに座る時もしっくり感がまったくなくなるので嫌だなと。まさに負の連鎖でしたね。 伊藤 お話を聞いてすごく悩んでいるなと感じましたが、その時には「対処すれば改善できるよ」と伝えました。 柳原 その言葉を聞いて、全然深刻な話ではないなと感じました。メンタル的にもそこで大きく変わりましたね。専門の先生に診てもらって、薬を処方してもらい、それ以来ずっと薬を飲んでいます。今は生理に対してノーストレスです。 ――その悩みをほかの選手に相談することはありましたか。 柳原 まったくなかったです。みんなにピルを飲んでいるかいないかと聞いたことはありましたが、飲んでいる人はほとんどいませんでした。 伊藤 私も現役時代、周りの選手やコーチ陣に相談したことは、ほぼなかったです。2キロくらい体重が増えてきたら、コーチは生理前かなと感じていたようでしたし、自然にくるものだから、という感覚で考えていたんだと思います。 柳原 それでも練習量は変わらないですよね。 伊藤 そうですね。私は男子選手と練習をしていたので、生理を理由に負けたくないと思っていました。 柳原 競輪の練習は男子選手とグループでやるので、力の差もあって男子と競り合うことはないんですが、生理だからこの練習メニューはこなせない、というのは自分のなかで許せませんでした。