米東岸で47年ぶりのスト開始。グローバルサプライチェーンの混乱は必至か
米国東岸港湾労使の基本協約(マスターコントラクト)が9月末で期限切れを迎えたことに伴い、労働組合ILA(国際港湾労働者協会)は1日、ストライキを開始した。米国東岸でのスト実施は1977年以来、実に47年ぶりとなる。使用者団体USMX(米国海運連合)は協約期限切れとなる9月30日、次期6年協約の期間内で50%近い賃上げや退職プランへの拠出額の3倍引き上げなどを再提案したが、ILAはこの提案を拒絶した模様。自動化などでも労使の考え方に差があり、早期収束は難しいとの見方もある。スエズ運河迂回(うかい)が継続する中で、グローバルサプライチェーンの新たな混乱要因となりそうだ。
ILAのハロルド・ダゲット委員長は同日、フェイスブックで声明を発表。「海外船社は米国の港で何十億ドルもの利益を得ているが、その労働に対して報いていない。適切な賃金と、自動化に対する防止策を得るまで、いつまででも戦う準備ができている」とコメントしている。
大手荷主などは、スト実施を見越し、年初からの在庫積み増しや、西岸経由比率の拡大など、対策を進めてきた。「前倒し出荷が夏場までに行われており、短期のストへの対応は荷主もできているが、長期化すれば、航空シフトなどの対策を採らざるを得ないだろう」(日系フォワーダー)
前回の77年ストは44日間継続したが、今回はどうか。
米バイデン政権は既に、タフト・ハートレー法に基づく介入を行わない方針を示している。また、11月5日に行われる大統領選挙までは、両陣営とも動きが取りづらいという見方もある。
外資コンテナ船社日本法人幹部は「2週間程度で政府介入や、双方の歩み寄りなど何らかの方向性が見えなければ、選挙後も事態が収束せず、長期化する可能性もある」と語る。
業界では77年ストにも参加したダゲット委員長は、子息であるデニス・ダゲット副委員長を後任に考えており、「勇退前に、歴史に名を残す仕事を成し遂げたいと考えており、強気の姿勢を続けるだろう」(海運関係筋)という見方もある。