「玄関内に着替え、スコップ」…雪国の冬の地震 どう備える?専門家に聞く
地震は前触れもなく突然発生する。時間帯や天候も関係ない。元日の能登半島地震も記憶に新しく、雪国の住民として冬期間どのような備えができるのか。防災に詳しい弘前医療福祉大学短期大学部講師の荒谷雄幸さん(63)にポイントを聞いた。 まずは「玄関の中にスコップを」と助言する。地震の揺れで屋根の雪が落ちて玄関前をふさいでしまう恐れがあるからだ。 できれば着替えや非常食などの防災用品を入れたリュックサックも玄関に置いておきたい。衣類は必ず、ビニール袋に入れた状態で。雪などで服がぬれると、体温は通常時と比べて20倍の速さで下がるという。 冷えた体を温める時は、先に胸の辺りを温めるのが最善だ。かじかむ手足を先に-と考えがちだが、そうすると冷たい血液が体に回り心臓に負担がかかる。可能なら湯たんぽなどを胸に当て、暖かい血液を心臓から全身に巡らせると効率よく体を温めることができる。 冬の体育館は、室温3~5度と冷蔵庫並みの寒さになることも。避難所では部屋全体を温めるよりも、毛布やアルミシートで体を覆い、一人ずつ温めた方が効率がいい。その際は発汗で体の水分が失われる危険もあるため、水分補給を忘れずに。ヒーターを使う時は子どものやけどにも注意が必要だ。 荒谷さんによると、雪道を歩いて避難する場合、夏場に比べて約1.4倍の時間がかかる。お年寄りは5分おきぐらいに立ち止まり、息を整えることも大事になる。あらかじめハザードマップで避難する場所を頭に入れておこう。 寒いときの食べ物は、温かくて高カロリーのものが理想的。「意外に知られていないが、カップラーメンはお湯がなくても、水を30分ほど入れておけばそのまま食べられる。普段から食べ慣れておくといい」 ほかに季節に関係なく、避難所には段ボールベッドを備えておきたい。段ボールベッドは、お年寄りが一人で起き上がるのに簡単で、床に寝る時よりも衛生的で感染症にかかるリスクも低い。子どもたちが遊ぶおもちゃやゲーム、絵本も避難所に必要だ。 「練習でできないことは本番でできるわけがない」と荒谷さん。段ボールベッドの組み立て方や避難経路、避難所では誰がリーダー役を担うのか-など、普段から災害を起きた場合を想定し確認しておくことが大切だと話す。 ◇ <あらや・ゆうこう 岩手県二戸市出身。岩手県北の二戸地区広域消防本部で長年消防士として勤務。東日本大震災の際に久慈市や野田村で救助・救出活動に従事したほか、2016年に台風10号が同県に上陸した際には岩泉町で仮設消防署岩手県部隊長の任務に当たった。気管挿管認定救命救急士の資格も持つ。弘前医療福祉大学短期大学部地域安全防災研究所の研究員として各地で防災に関する講演活動もしている>