テスラのサプライヤーも標的-デカップリング加速、中国利する可能性
(ブルームバーグ): 米国が中国人民解放軍に関係していると見なす企業のリストを広げる新たな動きは、大手企業の株価を急落させる以上のリスクをはらんでおり、米中間のデカップリング(切り離し)を加速させかねない。
バイデン政権は6日、ゲームバブリッシャーとして世界最大手のテンセント・ホールディングス(騰訊)や電気自動車(EV)バッテリーメーカーとして世界をリードする寧徳時代新能源科技(CATL)などを「中国軍事企業」のリストに加えた。CATLはイーロン・マスク氏率いる米テスラにとって、重要なバッテリーサプライヤーだ。
トランプ政権1期目終盤に成立した法律により、2021年に初めて中国軍事企業リストが発表されて以来、その対象は134社にまで増えた。その中には、時価総額で中国の上位20社に入る4社も含まれており、その合計価値はほぼ1兆ドル(約158兆円)に達する。
商務省の「エンティティーリスト」とは異なり、国防総省の中国軍事企業リストには具体的な制裁措置は盛り込まれていないが、米企業はリストに掲載された企業と取引することを控える傾向があり、関係する企業にとっては風評被害に等しい。
また、リストの急拡大は、軍事企業と民間会社の境界が曖昧になっていることを示している。より強力な措置が今後講じられるようであれば、サプライチェーンの分断が加速するリスクもある。
シンガポールのキショール・マブバニ元国連大使は、バイデン政権が今回打ち出した措置は米国にとって裏目に出る可能性があるとし、「賢明ではない」と指摘。
「全世界がテンセントやCATLを含む企業の広範な製品で中国への依存を強めるだろう」と述べ、「もし米国が中国企業とそのグローバルな影響力とのデカップリングを図るのであれば、米国は中国だけでなく、世界全体とデカップリングすることになる」との見方を示した。
従来からCATLなどの中国大手企業をリストに追加するよう強く主張してきた一人は、トランプ次期大統領が国務長官に指名したマルコ・ルビオ氏だ。バイデン大統領が退任間際に決めたこの措置が、トランプ次期政権の対中政策にどのような影響を与えるのかが注目される。